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柴川はその付き添いでUFOに同乗したと考えれば、なぜ柴川にだけUFOに乗った記憶があったのかという疑問にも、一応の説明がつく。
「でも、本当にそれは真実なのか?」
「だから、それを証明するために、これまで研究を続けて来たんじゃないか。」
そう答える柴川の目に、力がこもる。
「研究成果として、自分なりの宇宙論が完成した。そして、ノーベル賞も獲得した。後は、この理論を発展させれば、僕らがあの日連れて行かれた惑星がどこにあるのか、そう遠くない未来にでも特定できるはずだ。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。特定だって?膨大な宇宙の中から?50年前の惑星を?」
先ほどから柴川の発言に驚かされてばかりだが、もはや驚きを超えて、完全に理解が追い付かない。
「何せ、地球から遠く離れたところにあるんだ。まだ今は、まっ暗闇の部屋の中、手探りで蛍光灯の紐を掴もうとしているようなものだが、微かに紐が指先に触れたような手応えはあるんだ。」
柴川は、宇宙空間に存在する惑星に知的生命体が発生する条件や確率、その惑星の位置をどう測定するかの計算式を説明してくれたが、私には何が何だかさっぱり分からない。私は鞄の中をがさがさと漁ると、「この本を読んだら、少しは今の話が理解出来るようになるか?」と言って、姉から預かった柴川の本とサインペンを取り出した。
柴川は照れ臭そうに笑いながらペンを受け取ると、本の表紙裏にささっとサインを書き入れた。何故だか川の字だけがやたらと大きく書かれた、絶妙にアンバランスなサインだ。
「昔さ、芸能人みたいなサインを作ろうって言って、お互い考えたことあったよな。秀ちゃんが考えてくれたサイン、今になって役に立ってるよ。」
そう言う柴川に、私は「そんなおかしなサインなど考えた覚えはない。」と笑って答えた。
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