贈り物

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 ソファーに再び腰を下ろし、目の前のテーブルを見た。最新のゲーム機、電池を入れて持ち運びができてどこでも遊べる。それがあれば、母さんがいなくても寂しくないでしょと、先月の誕生日にくれたものだ。今までこんなに高価なものを所有したことがなかっただけに舞い上がる思いだった、ゲームも食い入るようにやった。周りの友達はみんな羨ましがった。  ゲーム機をしばらく見つめ、手にとってまじまじと観察した。長方形の形をしているその機会は、上部三分の一を横に長い長方形のスクリーンが占めており、スクリーンの下に十字のボタンと丸いボタンが2つある。下部にはいくつか小さな穴が空いており、そこから音が出る仕組みだ。後ろ側はグリップしやすいように曲線を描いており、上部にカセットを入れらるようになっている。明るい黄色が基調になったその機械はスクリーンが白黒なので、機械の発色をさらに良くして魅力的に写した。  迷いが生じて、気分が落ち込んだ。磨り減って色が変わったソファーはきしみ、ギィギィと音を立てた。  着古した晴れ雨兼用の上着を身にまとい、いつも履いている色の落ちた薄い青のジーンズを履いた。机の上に置いたゲーム機をポケットに入れ、靴を履いて紐を結び直すと、鈍く重い寂しさを残しながら、ドアノブを回し外へ出た。  まだ太陽が沈みきっていないため、淡いオレンジ色の光が町中を横から照らし、明日のクリスマスを祝っているようだった。元の色が分からないほど磨り減った階段を足早におり、友人の家に向かった。  ジグザグの小道を進み、近くの公園を突っ切った。公園では年齢が同じくらいの少年たちが声を掛け合いながらボールを蹴って遊んでいた。細い小道を通り、住宅街の間を静かに流れている小川に沿ってしばらく歩き、道を曲がると友人の家が見えた。息を整え、落ち着こうとする。インターホンを押すときに迷いが生じためらったが、家の外と中の音声を通すその丸いボタンを力一杯押した。  「だれですか?」と間の抜けた幼い声がスピーカから聞こえてきた。  「僕だ。ケイスケだよ」気持ちが落ち着かないため、インターホンの前で足踏みをしながら答えた。焦燥感に駆られてじっとしているのが難しいみたいだ。
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