贈り物

3/6

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 「ケイちゃんか。どうしたの?降りるから少し待ってて」と言った後にインターホンが切れた。家からガタンガタンと音がしてきた。着るものを急いで見繕っているのだろうか。少ししてドアが開き、友人が笑顔で出てきた。  「ケイちゃん、突然どうしたんだい?」  「この前、僕が持っているゲーム機を欲しいって言ってただろう?それできたんだ」  友人は合点がいったように頷いた。  「7000円だったら買えるって言ってたでしょ?今でもそう思っているかい?」  「もちろん!それを買うためにお小遣いを貯めているんだ。新品で買うとすごく高いでしょ。7000円だったら今すぐにでも欲しい!」  そのあとはその後の行動は早かった。友人は駆け足で家に戻ってお金を取りに行き、お小遣いを握りしめて駆け足で出てきた。彼はまだケイスケが手にしたことない5000円札と1000円札を2枚手の中に納めていた。ケイスケは彼にゲーム機を渡して、彼はお金をくれた。最新のゲーム機を手にした彼は飛んだり跳ねたりして喜んでいた。ケイスケも今までにない金額のお金を手に入れて、薔薇色の楽園にいる気分だった。ケイスケは颯爽と駆け出し、町の中心街へ母さんに贈るものを探しにいった。ケイスケは町のあらゆる店に出向いた。  悩んだ末に、ついに見つけた。母さんが仕事をする上できっと役にたつに違いない。足先に向けて細くなっているスニーカーで、そこの部分が衝撃を吸収してくれる構造になっており、長時間歩いても疲れにくくなっている。デザインもシンプルで嫌味がなく、どこにでも履いていけそうだ。母さんの靴は表面の皮が所々剥がれ、かかとは潰れており疲れていた。家々を訪問し物を売る母さんにとって、靴は一心同体と言っても同然だ。これでもっと楽に仕事ができるはずとケイスケの気分は浮ついた。  スニーカーは7000円だったため、1000円お金が余った。母さんお手は洗濯や食器を洗うことによって、指の先や関節部分がひび割れていた。いい洗剤を使っていないからか手の油分はなくなり、干ばつが起きた田畑のようにボロボロだった。余ったお金でハンドクリームを買ってあげた。それは金木犀の匂いがするハンドクリームで、歯磨き粉のチューブのような形をしており、ケースの柄は金木犀を散りばめた黄色を基調としたオシャレなデザインだった。母さんはお花の中でも特に金木犀を好んでいた。飾り気がなく嫌味のない見た目と心安らぐ匂いにいつも感動していた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加