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電車の中で見かけたその人は恋人によく似ていた。本人なんじゃないかとさえ思った。髪型も顔の輪郭も体型もどことなく似ている。顔つきはじっくりと見れば違いがある気もする。ほんの少しだけ微妙に何かが違う。じっくりと見なければ恋人にしか見えない。
話しかけようかと思った。何か事件が起きたような気もして、テンションも上がっていた。本物の彼氏とはチャットで繋がっていて、よく似ている人は誰かと話している。スマートフォンの画面を見てはいない以上、チャットの相手ではない。チャットの向こうの彼氏もそれは別人だとのことだった。
結局話しかけることはなく、恋人によく似ている人を見かけたのはそれが最初で最後だった。
そしてどういうわけか突然別れが訪れた。ドッペルゲンガーとの遭遇で二人の恋は死に、後には何も残らなかった。
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