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出会いをきっかけに知った 事実と真相
バイトで疲れた俺は、赤信号待ちをしている最中、近くの電柱に寄りかかっていた。
自転車の籠の中には、俺の鞄の他に、スーパーの袋も混ざっている。これは母から頼まれたお使いの品。
帰宅ついでにスーパーに行くなんて大した事ではないけど、夕方のタイムサービスでおばさん達にもみくちゃにされた。
だから今の俺は、まるで海中を漂うワカメの様。あんな大乱闘を繰り広げたおばさん達は、信号待ちの最中世間話を続けている。
あれだけの事があってもまだまだ元気だなんて、一周回って憧れるよ。
富士山の山頂付近まで登った事のある俺でも、あのおばさん達の波には対抗できそうにない。
最近俺のバイト先であるスポーツ用具販売店は、只今繁忙期真っ最中。秋の紅葉シーズン前だから、紅葉狩りで登山する人が増える時期。
だから最近は、登山グッズが売り上げの大半を占めている。そして俺の専門するコーナーは登山用具類。
午前・午後・平日・休日にも関わらず人々で賑わっていた。だから俺はこの時期になると、バイトのシフトをいつも以上に多く入れている。
でも、まだあそこでバイトを始めて二年ぐらいしか経ってないけど、繁忙期はトラウマレベルで忙しい。
レジ打ち・接客・商品棚や倉庫の整理など、仕事は溢れるほど沢山ある。暇な時が懐かしいくらいに。
もちろん給料はちゃんと貰っているけど、最近は厄介な客の対処もしなきゃいけないし、働く上でのルールも厳しくなっている。
働く事は別に苦じゃないけど、バイトに関係ない事柄で頭を抱える俺達バイトメンバーと店長。
でも、店長が良い人だから、俺もきっとこのバイトを続けていられるんだと思う。この前、売れ残っていた登山用具を破格の値段で俺に売ってくれた。
それは前々から欲しかった、超軽量な折り畳み椅子。それを使えば、座る所が無い場所でも、腰を下ろす事ができる。
でも今まで、高値だったから手が届かなかった。そんな俺の事情を何処で知ったのかは分からないけど、とにかくその折り畳み椅子は、大切に使っている。だからこそ、俺は店長の為にも、登山もバイトも続けるつもりだ。店長は、よく俺の登山体験の話を聞いてくれる。
やっぱり褒めてくれる人や、称賛してくれる人がいれば、嫌でも頑張ってしまうのが人間。
だから今日も、せっせとバイトに励んだ。けど、まさか母が夕飯のメニューであるミートソースパスタのパスタを買い忘れてるとは思わなかった。
疲れた上に腹が減った俺は、信号が青になると立ち漕ぎで家まで向かう。
「ニャアアア・・・」
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