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お台場で四つ葉のクローバーを見つけたことがあった。
その頃つき合っていた人と近くに観覧車が見える人工的な野原で探した。
四つ葉のクローバーを見つけるのはとても困難なことだとその頃は思っていたから、見つかるとも思っていなかった。
その瞬間、空を見上げた。なんてことのない東京の空だった。夏には光化学スモッグ注意報が出るどんよりとした青空がその時は輝いて見えた。
あげないよと彼氏に言い、むしったクローバーを濡らしたちり紙で覆って持ち帰ることにした。
数年後、彼氏と別れた後も四つ葉のクローバーは緑色の葉のまま残っていた。厚紙と透明フィルムに挟まれて、四つの葉をきれいに広げている。
ふと思った。微妙に不幸な気がする。ラッキークローバーを見つけたのに、彼氏と別れたし、人生も微妙にバッとしない。
もしかして四つ葉のクローバーはむしってはいけなかったんだ?
四つ葉のクローバーの押し花はその後、引越しをしているうちになくしてしまった。自分で捨てたのか間違えて捨てたのかも記憶にない。
ある日、もう一度四つ葉のクローバーを探してみようと思い立った。隣に誰がいるわけもなく、独りで……。
近くの公園を探した。芝生の中にクローバーが密集している。何日かかけて見つかるまで探してやろうと思った。
ところが、十分も経たずにその時がやってきた。空を見上げるような感激はなかった。「あ、あった」としか思わなかった。
意外と簡単に見つかっただけでなく、そのあたりに四つも四つ葉のクローバーが四つの葉を広げていた。
今回はむしらず、写真を撮ってお別れした。
数日後、再び幸運のクローバーを見に行った。雑草を片付ける業者が作業をしたらしく、公園全体がきれいになっている。
クローバーも四つ葉ごと刈られ、残骸しか残っていなかった。
むしって押し花にしてよかったのかも……。
そう残念に思った。それに、別に不幸でもないのかもしれないなと思った。生きていられるんだから……。健康なわけだし……。
三度目の正直で次は誰かと一緒に探して、二人のラッキークローバーとして押し花にしようと思った。
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