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俺、国王、ジィ、多数の使用人と盛大に寝坊した昼下がりの午後、俺は白ブラウス、黒ベスト、黒パンツとラフな普段着に着替えて昼食を自室でとった。今は食後にあたる。
側には相変わらず隙のないジィが控えている。俺より五センチ程、背の高いアラフォーのジィは執事服がよく似合う。
ジィを見ていたら栗色の目とあってしまった。ちょっとドキッとする。
そうだ、彼女を探すのだった。ジィのことを考えてる場合じゃない。手がかりは黒い靴と俺の記憶。……簡単にはいかなさそうだ。
「あなたの記憶ですか。名前も訊かなかったなんて男として恥ですねぇ」
ジィに鼻で笑われた気がするが、右から左へと流す。いつものことだ。
「だから、俺は考えた」
「その振ったらカラカラと音がしそうな頭でですか?」
「うっせー、ジジィ。頭はちゃんと詰まってる。俺は彼女に会いたいんだよ」
「私も、王子が恋に落ちたというその女性に、もう一度お会いしてみたいものですね」
おぉ、話が合うじゃねぇか。俺は胸の前で手を組んだ。
「昨夜舞踏会に来た娘に再度登城してもらい、靴を試着してもらう」
「……」
「だから招待状を送った女にはもう一度、通知を送れ」
昨晩、一生懸命考えた策を打ち出した。我ながらよく考えたと思う。ジィの頭の中では恐らく超高速で計算がされてるだろう。俺の計画と国家予算。
計算が終わったらしくジィが口を開いた。
「解りました。それなら大丈夫かと思われます。国王にも判断を仰ぎましょう」
やった!
俺もだてに王子をやってないからな。
翌日、国王の許可が降りて年頃の娘の再登城計画が決まったらしい。俺の執務室で国の歴史について勉強をしていると、ジィが詳細を報告するために顔を出した。
「明日、通知を出します。配達して目を通すまでに一週間はかかるでしょう。それぞれが都合をつける必要もあるので、さらに二週間は見積もります。きりも良いので三週間後の新月の日から3日間、でいかがでしょう?」
「はぁ、今週中じゃねぇの!?」
「三週間後の新月の日から3日間、です」
「何とかなんねぇの?」
「三週間後の新月の日から3日間、です」
「……」
「三週間後の新月の日から3日間、です」
「……わかった」
「承認、ありがとうございます。では計画を進めます。靴の合う女性が絞られましたら、ご確認をお願いいたします。それまでしばし、お静かにお待ちください」
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