出会った二人

4/4
前へ
/10ページ
次へ
 ジィが一礼をして退室しようとしたので、慌てて呼び止める。 「待って、俺もその日、立ち会わせて欲しい」 「……あぁ?」  語尾が上がり、明らかに迷惑そうな言い方だった。なに言ってるんだコイツ、と目まで語っている。でも俺も負けられない。 「その場で自分の目で確かめて、彼女に会いたい。王子ってバレないように変装して隅にいるだけにする。2、3人、護衛を追加でつけて貰えたらいい、予算も計画もそんなに変わらないだろ?」  睨まれた。めっちゃ睨まれてるけど、俺も目を逸らさない。 「……」  はぁ、とあからさまにジィはため息をつき、嫌そうな声で「かしこまりました」と呟いた。  三週間後には彼女に会える。俺は胸の高鳴りを感じた。  はやく月の明かりが消えれば良いのに。  それから就寝前は黒いガラスの靴に祈りを捧げ、自室のバルコニーから月を見上げるのが日課となった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加