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ジィが一礼をして退室しようとしたので、慌てて呼び止める。
「待って、俺もその日、立ち会わせて欲しい」
「……あぁ?」
語尾が上がり、明らかに迷惑そうな言い方だった。なに言ってるんだコイツ、と目まで語っている。でも俺も負けられない。
「その場で自分の目で確かめて、彼女に会いたい。王子ってバレないように変装して隅にいるだけにする。2、3人、護衛を追加でつけて貰えたらいい、予算も計画もそんなに変わらないだろ?」
睨まれた。めっちゃ睨まれてるけど、俺も目を逸らさない。
「……」
はぁ、とあからさまにジィはため息をつき、嫌そうな声で「かしこまりました」と呟いた。
三週間後には彼女に会える。俺は胸の高鳴りを感じた。
はやく月の明かりが消えれば良いのに。
それから就寝前は黒いガラスの靴に祈りを捧げ、自室のバルコニーから月を見上げるのが日課となった。
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