会いたい気持ち

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「きっと何か事情があって来れなかったのでしょう。大丈夫、別の方法があるはずです」  ジィが優しく諭すように語る。明日は雨だ。雨は嫌いだ。でもジィが優しいのは嫌いじゃない。 「……もう大丈夫、だと思う。自分でするよ」  何とか、ジィの目を見て言えた。ジィはホッとしたらしく、俺から一歩、下がった。 「かしこまりました。何かあったら、すぐに声をかけてください」  ジィが一礼をして部屋を去る。  キングサイズのベッドに背中から倒れこんだ。弾んだ後、羽毛布団が俺を優しく包んでくれる。  どれくらい横になっていたのだろう。心が落ち着いてきたし、熱いシャワーでも浴びて寝ようと思った。  俺は起き上がり浴室へ向かった。  次の日は雨だった。ちくしょう、ジィが優しくしたからだ。  ジィは朝から国王(おやじ)と打ち合わせをしているらしい。使用人に声をかけると朝食が運ばれてきた。そういえば昨夜から何も食ってない。そう考えた途端、腹が減ってることを自覚した。  ガツガツとガッツリ、朝食を食べ、腹ごなしに城内を散歩することにした。勉強?執務?そんなの知らないや。  ふらふらと廊下を歩いていると、ジィの部屋の前に木箱が置かれているのを見つけた。何だ? 大人のオモチャか?  周りを確認すると誰もいない。よし、開けたれ!  ワクワクして開けた俺は、大量の郵便物を見て一気に白けた。 「えー、面白くないー」  事務的な封筒ばかりだ。  隣国の宰相クリスさんから、この国の宰相ジムさんから、卸売業から料理長宛、字の汚いリサさんから、城の労働組合意見書、教会の司祭のエリックさんから、騎士団の団長宛……。  いくつか手に取ってみたが実に面白くない。漁っても出てくるのは封筒もしくはハガキ。絶対にオモチャなんて無さそうだ。  つまらないものを見てしまった、部屋に帰ろうと立ち上がる。  毎日この量の郵便物をひとつひとつ、ジィは確認してるんだ。暇じゃないんだなぁと、ふと思った。  話し合いを終えたらしきジィが部屋の前で待っていた。 「フラフラとどこに行ってたんですか?」 「俺も暇じゃないんだよ」 「そうですか。ではお忙しいことろ、失礼します」  俺に続いてジィも部屋に入った。先程の木箱を思い出しジィを見ると、今日も隙なく執事服を着こなしている。 「……ジィも忙しいんだな。お疲れさん」 「? 珍しいですね。だから、今日は雨なんですね」  雨はジィのせいだろ、と思ったが口に出さないことにした。
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