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あの後なんだかよく分からないがとにかく生きてるなら通夜は出さなくていいだろうという話になり、皆とりあえず家に帰る事になった。
今晩は俺と賢が泊まるよ、親父もお袋も疲れてるだろうから部屋に戻ってゆっくりしたらいいとおじいちゃん達に言った。
一番下の賢おじちゃんはおう、と応えて
「家に戻ってて」と奥さんの妙子さんと従兄妹のマミとサトシ、次に僕らにも頷いてみせた。
三人で車に乗り込んで発進した後、しばらく皆黙っていたが最初に口を開いたのは母だった。
「驚いたわねぇ」普段フラットな母らしく言ったほど驚いてない口調だ。
思わず驚いとるんかい!と突っ込みたくなる。
「ホントに驚いてんの?」修が突っ込んだ。
「驚いてんのよ、これでも」自覚はあるらしい。淡々と返す口調に僕は吹き出しそうになった。
「いったい」
「どうなってるのかしらね」アクセルを踏みながら呟いた母に誰も返事ができなかった。
家に帰れば日常に戻る。服を着換えお風呂に入り…でもなんとなく一人になりたくなくて、いつもならさっさと部屋に籠もるんだけど俺はリビングに戻った。
皆同じ気持ちなのかカーペットに修があぐらをかいてスマホを見ているし、母もソファに座って新聞を眺めていた。
「あ、お父さんから明日の事の伝言だけど」母が新聞から目を離し
「明日は土曜日でしょ?とりあえず修は課外授業に行って。夕方には帰って来るでしょ?」
「はあーい」
「圭は?」
「俺はバイトは断ったら明日は空いてるよ」
「じゃ待機してて」あっさり返された。
しかしさっきまで亡くなってたと思ったけどちょっと前に息を吹き返したなんて…誰か信じてくれるのかな、ちょっと言えないなあ。
「分かった」
要件が済むと母はまた新聞に目を落とした。
「母さん」
「なに?」
「それ昨日の新聞」
「アラ」
「もう寝るわ。皆寝た方がいいよ」
思考停止だ。
めいめい自室に戻った。
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