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朝が来た。目覚めた俺は明るくなった部屋でぼんやりと天井を見上げる。
何時だ?
時計を見たら6時だ。のろのろと起き上がりパジャマのまま下へ降りて行った。
おふくろがキッチンのテーブルに頬づえをついて座っていた。
「おはよう」声をかけると「あ、おはよう」
となんだかぼんやりした顔で返事が返ってきた。
「あ、ひいおばあちゃん亡くなってたらしいから」驚いた顔の俺を見ながらよいしょ、と立ち上がり
「さっき連絡があって」ちょっとよくわかんないんだけど、と前置きがあって
「お父さん寝ちゃったらしくて。朝起きたら呼吸が止まってたんだって。詳しい事はわからないけどご飯食べたら行かなきゃ、修も起こさなきゃね」
ぼそぼそと3人で朝食を食べて7時..。
7時半に出るわよ、とおふくろに言われて修と二人で2階に上がった。
部屋に入ってすぐノックの音があり修が顔をのぞかせた。
「昨日夢を見たよな」
「見た見た」修はあふと欠伸をした。
「おかげで眠りが浅くてさ」しきりに目をこすっている。
「そうか?俺、ぐっすりだったけど」
「結構図太いね」
「何だったのかな?」
「わからん」
「俺さ、すっごい気になってて」修が真顔で言う。
「何を?」
「ばあちゃんて夢の中で生きてたと思う?」
さあなと呟いた。
夢だからな。
「お前ひいじいちゃんになってたじゃん」
「あ、そうそうそうなんだよ」
「夢だもんなー何でもありだよな」はははと笑う修に
「とりあえず着替えよう、時間に間に合わないといけないから」
実家に着いたらイトコ達はまだいなかったけど親父におじさん、おばあちゃんにおじいちゃんが仏間にいた。
北枕で横になっているソノさんに対面した。
少し笑ってるみたいだ。ほっとした。
「俺がうっかり寝ちゃったんだけど」親父が下を向いて言った。
まるで自分のせいみたいにうなだれてる。
「関係ないと思うよ」修が静かに返した。
そうだよ、関係ないよ
皆で大きく頷くと
「そうか?」と呟いてほっとした顔をした。
しばらくするとイトコ達家族や叔母も到着した。
葬儀社の担当者が慌ててやって来た。昨日腰を抜かした部下も微妙な顔をしながら後ろから付いてきた。
「昨日はすみませんでした」二人に開口一番に深々と頭を下げて謝られた。
「いえ、お世話になります」こちらも頭を下げた。
「ではお支度をさせていただきます、少し隣のお部屋でお待ち下さい…」
それからは通夜、お葬式、初七日と滞りなく進んでいった。
真夜中に俺達とソノさんで見つけた封筒は布団をそっとめくるとソノさんの胸の上にあり、両手で抱えられていた。
「それは大事なものだから」修と二人で夢の話をした。皆、しんとなった。
「おばあちゃん本当に方向音痴だったからな」賢おじさんの言葉に皆がうんうん、と頷いた。
「黙ってついてくと違うとこに行っちゃうのよね、でもおじいちゃんが来てくれるなら安心だわ」カスミ叔母さんがハンカチで目を押さえながら言った。
着替えが終わった後、おばあちゃんは着物の合わせに封筒を差し入れた。
「お父さんよろしくお願いします」と小さな声と拝む横顔に思わず一緒に手を合わせた。
ひいおばあちゃんが迷わないように迎えに来てあげてください。
顔を上げると皆手を合わせていた。
とまあこんな経緯があったわけで。
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