喰べる

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わずかな灯りを除いて、全て落とされた。 月明かりすら雲の中に隠れてしまったから、この部屋はもう薄い闇の中だ。 そして聞こえる音と言えば。 男2人の体重を受けて悲鳴を上げたベッドの軋みと、聞くに耐えない嬌声や荒々しい息。 「っ……ぁ、ぅ、っく、ッ……はッ……」 「指を、噛まないで」 ……僕の身体の上で。優しげなのは声だけの、支配者如く振る舞うこの傍若無人な男。 今も碌に慣らすこともなく、性急にその凶器とも言えるソレで僕の半身を貫いている。 いつまでも慣れることのない違和感と異物感、痛みを感じてのたうち回る姿を彼はとても好む。 ―――思えば全てが間違いだったのだろう。 3ヶ月前、屋敷の前で一匹の犬ころを拾ったことも。それに餌を与えて飼い慣らそうとしたことも。 彼は……ジャックはただの犬ではなく、人狼だった。 最初はほんの子犬サイズ。それが三日三晩で人間の子供のような大きさに。さらに1週間後の朝、人間の子供そのモノに変化していた。 そこで初めて知ったのだ。彼が獣人族、人狼であると。 遂にひと月前には既に今の大きさ……10代後半位の少年になってからも、彼の食欲は収まることが無かった。 しかも彼は肉を好んだ。家畜の肉だけではない。人間の肉も喰らうのだ。 住まわせていた人間の使用人が食い殺された。 盲目で身寄りのない娘。こんな森奥深くの屋敷に働きに出るほど金も親しい者も、何も持たない娘。 無口な彼女を、私はそれなりに気に入っていた。 ……前の晩、オレはその娘とキスをした。何も写さぬ白く濁った瞳を美しいと言い、跪いてその手を取ったのだ。 それなのに。 朝が空けて、彼女の寝床は乾ききらぬ血にまみれていた。ほとんど骨と臓器と筋組織の欠片になった娘の前で彼は、ジャックは眩いばかりの笑みで言ったのだ。 『美味しかった。ありがとう』と。 それからはもうめちゃくちゃだった。 度々使用人達が食い殺される。行方不明の者も出た。ジャックを叱りつけようにも傷付いたような瞳でこういうだけ。 『美味しかった』と。 彼は恐ろしいほど美しい少年に育った。ゾッとするほどに。 燃えるような紅い瞳を彩り飾る長くフサフサとした睫毛。彫りの深い顔立ち。厚く色気を孕んだ唇。口元の小さな黒子すら心臓を鷲掴む程セクシーだった。 無邪気さと危うい色気と、そして捕食者のその色の前でオレは為す術もなかった。 そして三日前。遂に彼はオレを食べた。 捕食したという意味ではない。 性的な意味で、だ。つまり……強姦された。 見た目年齢だけでも10歳ほど年上のオレを、あの人狼少年は蹂躙したのだ。 『デザート』という言葉で。 全てを暴き立てて、肌に歯型や痣を付ける。キスと称して口内をその長い舌で舐め尽くし、排泄器官に自らの性器を突き立てる。 当然抵抗したし、泣き叫んで助けを求めた。 しかしその時既にこの人狼に怯えた使用人達は助けに来るどころか、このオレを……主人を生贄に差し出したのだ。 絶望と恐怖、屈辱の中でひたすら行われる性行為に一層のこと気が狂ってしまえば良かった。
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