1.急いでいると、ろくなことがない

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1.急いでいると、ろくなことがない

 私は、()()()()ユウ。これから就活スタートで荒波に()まれる短大一年生。  学校に入った年にもう就職のことを考えないといけないなんて、慌ただしいったらありゃしない。四年制大学の方がのんびり学生気分をエンジョイできてよかった。これは、同期で専門学校に行った友達も同意見。  狙う業界? なんとなく、IT・情報・通信ってとこかな。人手不足と聞いているし、お給料もよさそうだし。  まず、企業訪問の前に、準備、準備っと♪  でも、授業がない時はバイトも家事の手伝いもせずに家でゴロゴロするのが趣味の私にとって、就活準備のため()()にあちこちお出かけしなきゃいけないというのが、実にめんどくさい。  めんどい! そうそう、この言葉って近世にも使われていたのよねぇ。  それはそうと、エントリーシート書いたら、それで採用してくれないかしらねぇ……。人工知能が審査して、ハイ合格、なんてね。  それでもなんとか、老骨に鞭打つじゃなくって、怠惰な自分を大いに励まして、畳に張り付いた体を引っぺがし、それはもう頑張りました。……本当は、お母さんに腕を思いっきり引っ張られたんだけど。  一応、髪の毛は訪問先で目を付けられないように染め直したし、眼鏡は知的に見えるように新調したし、化粧品もちゃんとしたのを一揃い買ったし。  やり方わからないから、お母さんに教わって真面目にお化粧をやってみたら、ビフォーアフターの差が半端ない。  うん。できる女、完成!   ……と、ここまでは、よかった。  いざ出陣してみると、番地を間違えて行ってしまったとか、飛び込んだのは隣のビルとか、道に迷って無駄に歩き回るので、足はパンパン。筋肉痛で、おまけに腰痛。緊張続きでクタクタ。  これぞ、苦行の日々……。  お母さんが買ってくれた、もう成長しないのにちょっとサイズの大きな黒の就活スーツは、真新しい匂いだったのがもう汗臭い。ま、説明員が間近に迫ってこないから、いっか。……迫ってきたら逃げますよ、一応。 (本当に、就活で挫折せず、面接までこぎ着けて、内定取れるのかなぁ……)  説明会の段階で、もう不安がいっぱい。焦りもいっぱい。  でも、今日訪問したクラウド関連の会社は、素人採用が多い所で、説明してくれた方も親切で、とてもいい感じだった。ここならいいかな? 仮決定……なんて、早すぎるかしら。  明日は別のクラウド関連会社の説明会だけれど、ちょっと興奮して眠れないので、しばらくぶりにノートパソコンを開いて、ネットサーフィンでも……。  と、その時、携帯ゲーム『お店作っチャオ』の広告を発見。  先週から始まったみたい。店舗経営のシミュレーションゲームだって。  自分がオーナーになって、従業員を雇って、商品を仕入れて棚に並べて、よそのお店に買い物にも行ける。楽しいイベント盛りだくさん。 (フーン、なんか気になる。後でスマホで遊んでみようかな)  他にも気になる記事を読んで夢中になっていたら、フワワワワーッとあくびが出たので、ふと時計を見る。ゲッ! 午前3時! 慌ててベッドの中へ。早く寝ないと。明日も早いのだ……、ウトウト……。
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