2.アルバイトに採用されました

2/4
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
 私とパンダさんは、ピンポンピンポンピンポンピンポンというチャイム音がBGMと化した状況の中、お互いを見つめたまま動かなくなった。青色と茶色しかない世界に、このパンダさんの白と黒のツートンカラーは(まぶ)しい。 (あれ、着ぐるみよね? あんな格好で立っているし、まさか本物がこんな場所にいるわけないし。でも、声をかけたらガオーって叫んで襲ってきたりして……。どうしよう……)  声をかけるかかけまいか迷っていると、急にパンダさんが後ろへ振り返った。 「てんちょー。バイトの子が来たよ」 (パ、パンダさんがしゃべった!?)  そして、もう一度私の方を見る。 「やあ、君。中に入りなよ」  パンダさんが右手を握り、親指を立てて、それを後ろの方へ二回向けた。この動作がいかにも人間っぽい。 (着ぐるみにしては、口の動きがカクカクじゃなくて、とても滑らか。まさか、ここって、しゃべる動物がいる世界なのかしら? 本当に、ファンタジーの世界?)  襲われなくてホッとしたけれど、着ぐるみじゃなくてしゃべる動物なら、何をされるかわからない。私は、少し警戒しながら声をかけてみる。 「あのー、ここはどこですか?」 「このお店かい? ノインエルフという名前のお店だよ」 「お店の名前、ありがとうございます。そうではなくて――」  私は、ぐるりと辺りを見回しながら、「ここはどこですか?」と尋ねた。 「ああ、ここって、この世界のことかい? 携帯ゲームの『お店作っチャオ』って知ってる?」 「いいえ」 「なーんだ、知らないのー?」 「ごめんなさい」 「フーン。やっぱりね。始まったばかりでプレイヤーも少ないらしいから、仕方ないか」 「そのゲームと何か関係があるのですか?」 「おおありだよ。だって、ここ――」  パンダさんが両手を大きく広げ、でっぷりとしたお腹を強調するかのように突き出して、辺りを見渡す。 「そのゲームの中の世界だから」
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!