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私とパンダさんは、ピンポンピンポンピンポンピンポンというチャイム音がBGMと化した状況の中、お互いを見つめたまま動かなくなった。青色と茶色しかない世界に、このパンダさんの白と黒のツートンカラーは眩しい。
(あれ、着ぐるみよね? あんな格好で立っているし、まさか本物がこんな場所にいるわけないし。でも、声をかけたらガオーって叫んで襲ってきたりして……。どうしよう……)
声をかけるかかけまいか迷っていると、急にパンダさんが後ろへ振り返った。
「てんちょー。バイトの子が来たよ」
(パ、パンダさんがしゃべった!?)
そして、もう一度私の方を見る。
「やあ、君。中に入りなよ」
パンダさんが右手を握り、親指を立てて、それを後ろの方へ二回向けた。この動作がいかにも人間っぽい。
(着ぐるみにしては、口の動きがカクカクじゃなくて、とても滑らか。まさか、ここって、しゃべる動物がいる世界なのかしら? 本当に、ファンタジーの世界?)
襲われなくてホッとしたけれど、着ぐるみじゃなくてしゃべる動物なら、何をされるかわからない。私は、少し警戒しながら声をかけてみる。
「あのー、ここはどこですか?」
「このお店かい? ノインエルフという名前のお店だよ」
「お店の名前、ありがとうございます。そうではなくて――」
私は、ぐるりと辺りを見回しながら、「ここはどこですか?」と尋ねた。
「ああ、ここって、この世界のことかい? 携帯ゲームの『お店作っチャオ』って知ってる?」
「いいえ」
「なーんだ、知らないのー?」
「ごめんなさい」
「フーン。やっぱりね。始まったばかりでプレイヤーも少ないらしいから、仕方ないか」
「そのゲームと何か関係があるのですか?」
「おおありだよ。だって、ここ――」
パンダさんが両手を大きく広げ、でっぷりとしたお腹を強調するかのように突き出して、辺りを見渡す。
「そのゲームの中の世界だから」
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