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プレーヤーが最初にこのゲームで新規登録すると、床、壁、屋根、照明、レジ、3つの棚、そしてゲーム内の通貨であるゲルトで5000ゲルトをもらえる。ゲルトは、Gと略される。
でも、シーポさんは、所持金を増やすために棚を2つ、合計300Gで売り払い、5,300Gから始めた。
これで1つ258Gの焼き肉弁当を仕入れるだけ仕入れて、1つ380Gで売って、今は7,740Gになっているとのこと。計算してみると、20個を仕入れて全部売り切った計算になる。
もしここで、7,740Gを全部焼き肉弁当にすれば、ぴったり30個なので、完売すれば11,400Gになる。2回の完売で元手が倍以上になる計算!
ところが、シーポさんが自分で仕入れるモードなのに仕入れないらしい。私は、寝落ちしているのではないかしら、と思う。
「だからさあ、オーナーが僕たちに仕入れさせるお任せモードにすれば、ガンガン焼き肉弁当を仕入れて元手を2倍以上に出来たのにぃ」
「アルバートくん。流行を忘れちゃだめだよ。僕らが焼き肉弁当を売り続けたら、仕舞いには買い手が減って棚が売れない商品で溢れるよ。同じ物を売り続けたら、みんな飽きるだろう?」
「もちろん忘れちゃいないさ。でも、流行っているときにガンガン売らないと、いつ売るのさ。今でしょうが」
「まあねぇ……。今、450Gで売れるからねぇ」
「ほら、そしたら13,500Gまでいったじゃん。機会損失だよ。チャンスロスって奴」
ここで、私が右手を肩まで上げて質問を挟んだ。
「あのー、もし売っている間に流行が他に移って売れなくなったら、値段を下げてでも売るのですか?」
すると、アルバートさんは大きくかぶりを振る。
「いいや。棚から引っ込めてインベントリーに仕舞うよ。そして、流行が再燃するまで待つ。弁当の場合、1日3回大波が来るから」
「えっ? そうしたら、お弁当が腐るのではないですか!?」
「何言ってるんだい。腐らないよ。いつまでも」
「えっ? ええっ!?」
「知らないの? この世界の食べ物って、永久に腐らないよ。だからしまって置いて、また取りだして棚に並べるのさ」
私は、食品サンプルでも売っているような錯覚に陥った。
「不思議そうな顔をしているね。バイトに来たのに知らないのかい?」
「え、ええ」
「前の店でバイトしていなかったの?」
「はい」
「フーン。そういう新キャラもいるんだぁ」
「新……キャラ?」
「知らないなら、ここで売っている商品について、説明しようか。この世界を知らない君なら、ビックリするかもね」
私を悪戯っぽく見つめるアルバートさんは、両足を広げて腕を組んだ。
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