無くてはならない存在

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無くてはならない存在

 パーティーの夜、アパートに戻った聡は、真由美へのメッセージで悩んでいた。  ショートメールなど、たまに母親と交わすていどで、しかも要件だけの簡単なものだ。  あまり長々としたのもウザいだろうし、あっさりし過ぎもどうしたものか。  聡がスマホで『女性が喜ぶLINE』を検索していると、真由美からメッセージが入った。 『鈴木さん、こんばんは。今日はありがとうございました^ ^ おかげさまで、憂うつな時間が楽しく過ごせました(笑) お仕事頑張ってください。おやすみなさい』  聡は真由美のメッセージを、何度も読み返した。  かすかに、またお会いしたいですとか、都合の良い言葉を期待していたが、さすがに欲張りすぎだ。  返信を考えあぐねていると、あっという間に二十分ほど経っていた。 —— まずい、もう寝てるかも……  聡は簡単に、自分も楽しかったこととおやすみのメッセージを返し、ベットに入った。  ただ消灯後も小一時間ほど、返信が気になり、なかなか寝付けなかった。 ***  その後はほぼ毎晩、簡単な挨拶を交換するようになった。会話は得意じゃないが、メールなら気負わずにすむ。  決まってだいたい夜の十時ころで、聡はそれまでに風呂を済ませることが、日課になった。  ちょうど、オンラインゲームの仲間が集まる時間だが、すっかり参加しなくなった。  真由美がくれたメールに返信するだけだが、聡は満足していた。  聡よりは人付き合いが多い真由美は、深夜に帰宅することもあるらしく、その場合は翌朝、おはようの挨拶が届く。  真由美は、休日は読書などですごしていることがわかった。  聡は三十二年の人生で、一度だけ彼女がいたことがある。数合わせで参加した合コンで知り合ったのだが、なんとなくソリが合わず、半年で自然消滅した。とくに悲しくもなかった。  ところが真由美は、まだ知り合って三週間ほどだが、無くてはならない存在になっていた。  自分と同じインドア派で、波長が合った。 キャンプとかスポーツをしたがる女性は到底ムリだけど、真由美は美術館とかも好きらしい。  真由美とのデートをあれこれ妄想しながら、一度も誘うことが出来ないまま、一ヶ月が過ぎた。  そんなある日の夜、真由美からのメッセージを見た聡は、小踊りして喜んだ。
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