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1話=お仕置きされてもいい子になれない
「構って欲しいだけなのはわかる、でも、相手が嫌がる事をしちゃダメだ」
「なんの事?僕知らない!」
みんなで遊んでいる中、一人だけ呼ばれて叱られてしまった。
ショックだった。
手を出すように言われ、あの方にピシッとシッペをされる。
僕を叱ったのは、まだお若い一族の総長で、このお屋敷の主人だ。
本家であるこのお屋敷の一室や広大なお庭、納屋は一族の子供たちの遊び場になっている。
そしてその様子がどうやら、書斎で執務やお勉強をしているこの方の目に入っていたみたいだ。
そして懲りない僕は、別の日の帰り際にも、また使用人に呼び止められ、
あの方の自室に連れて行かれてしまった。
その日のお仕置きはしっぺでは済まなかった。
なんと、あの方の膝に乗っけられ、お尻を叩かれてしまったんだ。
ここいらじゃ子供を叱る時によくする罰。
でも、甘やかされて育った僕はあまりこうやって叱られた事がなかった。
屈辱だ。
なのに、あの方の膝の温もりから離れたくないと思ってしまった。
それに他のみんなが帰った後に二人きりで話せたことも、ほんのちょっとだけ嬉しかったんだ。
それから誰かに意地悪をするたび、あの方の膝の上でお尻を叩かれるようになった。
叱られるのはとてもショックだ。あの方に逆らうつもりもない。
なのに……僕はどうしてか以前より粗暴な子供になってしまった。
◇
お仕置きを頂くようになってしばらく経ったある日、膝の上で僕は言われた。
「意地悪ばかりするようだと、もう、この屋敷で遊ばせないよ」
「やだ!」
この屋敷に出入りできないってことは、帰り際にお部屋に呼んでもらうどころか、この方の気配すら感じられなくなるってことだ。
お仕置きなんかよりずっとずっとショックで、暴れた僕の手が綺麗な顔を引っ掻いてしまった。
「ニール……!」
身動きが取れないようにぎゅっと抱きしめられる。
「いい子にできたら、毎日褒めてあげるのにな」
それは思いもしない言葉だった。
じっとあの方の綺麗な顔を見る。
すると頬にキスをしてくれた。
頬へのキスはお父さまだってお母さまだって毎日してくれる。
なのにあの方の唇の柔らかさを感じ、豊かな金の髪に頬をくすぐられると、ふわふわと宙に浮いたような心地になった。
「僕……いい子になる」
「そうか」
あの方は僕の頭をなで、いっぱいキスをしてくれた。
けど、僕は天邪鬼で、すぐには優しくなれない。
みんなと遊べば、やっぱり意地悪してしまうんだ……。
そんなある日、とうとう帰り際に呼び止められる事なく、そのままみんなと一緒に帰されてしまった。
……いくらお仕置きされてもいい子になれないなら、もうお屋敷に来ちゃダメって言われるかもしれない。
僕はどうしても家に帰る気になれず、お屋敷に引き返して書斎の窓から中を覗いた。
するとすぐに気づいたあの方が僕を手招き。
「どうした?」
「ごめんなさい。いい子になれなくて」
泣き出してしまった僕を、あの方は優しく抱きしめてくれた。
「もう来るなって言わないで。お仕置きをして、許して」
「……そうか。少しずついい子になるよう努力できるかい、ニール」
「うん」
「じゃあ、今までより少しきついお仕置きで許してあげよう。でもいい子になる努力をしなくちゃダメだよ?」
僕は裸でお尻を叩かれた。
服を着ていた時よりずっと痛くて、恥ずかしい。
そして、真っ赤になったお尻を鏡で見せられる。
「ニール、今度からちょっとでも意地悪をしたら、どんどんお仕置きがきつくなるよ」
それでもまだ僕は毎日叱られた。
やった意地悪によってお仕置きは変わる。
一番嫌だったのは、窓辺で裸のまま四つん這いになって「悪い子でごめんなさい」と言いながら、自分で自分のお尻を叩かされた事だ。
ほんとうにみっともなくて、あの方の冷たい目が悲しかった。
そして、とうとう僕は、みんなと遊んで一つも意地悪をしないでいることができた。
本当は、ちょっとだけ迷った。
意地悪をしないと、あの方が部屋に呼んでくれない。
けど僕は意地悪をしなかった。もう来ちゃダメだって言われたくなかったからだ。
するとその日、またあの方に呼ばれた。
どうしたんだろう?気づかない間に僕は何かやってしまったんだろうか?
不安になった。
あの方は僕を抱き上げ、膝の上に向かい合って座らせた。
「今日はずっといい子だったね、ニール」
顔中に優しくキスをしてくれた。
そして、あったかい手でお尻をなでてくれる。
太ももや背中もなでてくれて、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「これからもいい子にできたら、こうやって褒めてあげるから」
「ほんと?」
「もちろん本当さ」
チュ……とあの方の柔らかい唇が、初めて僕の唇にふれた。
僕は嬉しくなって、あの方の綺麗な顔に頬ずりをし、いっぱいいっぱいキスを返した。
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