155人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
4話=内緒
初めてお仕置きをされてから半年くらい経つと、僕はみんなと遊ぶためじゃなく、ご褒美をもらいたくてお屋敷に通ってるんだって自覚するようになっていた。
学年が上がり、年が上の子達は学校が終わるのが遅くなって遊ぶ人数も減っていたし、同じくらいの年の子たちも遊びより勉強をすることが多くなって、本当は全く楽しくなかったんだ。
でもみんなと遊ばないと、あの方からお仕置きやご褒美がもらえない。
僕はみんなと遊ばず、あの方に会ってもらうためにはどうすればいいのか一生懸命考えた。
勉強をしている中、僕が抜け出したって誰も気にしない。
重厚な書斎のドアをノックする。
机に向かっていたあの方は、すぐに僕を中へ入れてくれた。
そして、みんなと遊ぶのは退屈だから、何かお手伝いできることがないかとたずねてみた。
とってもいい案だと思ったのに、あの方は困ったように微笑むだけだった。
「今は外国語を勉強中なんだ。手伝ってもらえるようなことはないからみんなと遊んでおいで」
それでもしつこくお願いしたら、ため息をついて、帰りにちゃんとご褒美をあげるからまたおいでと言われてしまった。
「ご褒美が欲しいんじゃないの。バートさまのお役にたちたいんだ」
面倒に思われているのはわかってたけど、それでも食い下がった。
「じゃあ、今日は僕がニールにご褒美をもらおう。だから、またあとで来てくれるかい?」
「……はい!」
バートさまに僕がご褒美をあげる……。
とっても素敵なことだ。
嬉しくて、ワクワクした。
みんなのとこに戻っても勉強なんか手につかない。
明るい日差しに誘われるように庭園に出た僕は、一人散策することにした。
石を蹴って追いかけるだけですごく楽しい。
チラリと書斎の窓を見ると、またワクワクした。
「随分楽しそうだね。何か良いことでもあったの?」
息抜きで出てきたソニーが僕に声をかけて来た。
ソニーはバートさまの甥だ。みんなに愛されている。
僕もソニーが大好きだ。
けど、素直になれずにいつもひどいことを言ってしまう。
ソニーはバートさまととても仲がいい。
僕とバートさまとなんかよりずっとだ。
そんなソニーに『今日、僕はバートさまにご褒美をあげるんだよ』と教えたら、どんな顔をするだろう。
彼に羨ましがられるのは、何より気分がいいはずだ。
けど、内緒だ。
あの方と僕の間に秘密があるっていうのも、すごく気分がいい事だから。
ずっとずっと内緒にして、いつか『実はバートさまに、とても親しくしていただいてるんだよ』と教えて驚く顔を見てみたい。
「この後、とってもとってもいい事があるんだ。でも内緒。ソニーには教えてあげない!」
「そっか、残念だな」
その言葉がすごく嬉しかった。
僕は夕方、鼻高々な気分であの方のお部屋に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!