ラミーとバッカス

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「その筋肉は見せかけだか?」  小馬鹿にするような口調で二人の後ろから声をかけた者がある。  小梅だった。 「おめ、できんのか」 「わけもね」  二人の間に輪って入り、ちょんと蹴ったボールはペナルティアークの中に落ちた。  全然でねえか、と言いかけた二人の視線の前で、一度落ちたボールがそのまま転がって二人のボールを追い越して、ついにゴールの中に入った。 「何やったんだ」 「回転さかけた」  こすり上げるようにして蹴り上げたボールはトップスピンがかかり、落ちると前に転がる。芝が見事に整えられたJヴィレッジだからできる裏技だった。 「これ」  左右のポケットから赤と緑の箱を取り出す小梅に松長たちの顔が曇った。突き返される、お断りと思ったのだ。 「一緒に食うべ」  一ヶ月考え、サッカーを続ける決心を固めた。松長と佐竹がさしのべた手につかまることにした。  松長が赤い箱を開ける。二本のチョコレートバーの銀紙を破り、一本をまるまる小梅に手渡す。もう一本は真ん中で割り佐竹と自分で半分こ。  佐竹が緑の箱を開ける。ブロック状に組まれた一ダースのチョコレートをこちらは四つずつ分ける。  出会いと別れの数は同じである。別れは悲しいものだが、それは新しい出会いの始まりでもあるのだ。 「にがっ」  小梅が思わず漏らす。  初めて口にした酒の味はほろ苦いものだった。
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