ラミーとバッカス

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「ウメコ、おらの仕事は知ってるな」 「地方公務員」 「んだ。福島県の職員だ」  福島県庁は福島市にあるが、叔父はいわき市にある分署に勤務している。  福島県には東京電力の所有する福島原子力発電所がある。福島県の電気を担っているのは東北電力である。  電気は貯めておくことができない。東京で使われる膨大な電力を、まだ人間が完全にコントロールできていない原子力を用いて安村ことなく作っている。そのリスクを負っているのはその電気を使ってもいない地方で、そうした原発は各地にある。  もし何かが起こった場合に備え、浜通りに配置されているのが叔父の部署である。また本庁舎を離れるのは出世コースから外れるのも意味していた。  そんな貧乏くじを、小梅の伯父は自ら望んで引いたという。やはり変人である。  そして叔父が所属するのは防災課である。あらゆる災害に備えるのが仕事であるが、天変地異はそうひんぱんに起こるものでもない。  ただ、海難事故は別。海の幸を求める漁船は一年中出ているし、夏になれば東北の湘南ともよばれる小名浜の海水浴場は賑わいを見せる。  何か起こればそこで陣頭指揮を取るのが叔父の仕事だった。偏屈なのはあまりにも多くの生き死にを見てきたからだと母は嘆く。
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