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「でも、なんでこの箱だけでその二人だってわかったの?」
壮絶な過去を知ってしまった小梅は、素朴な質問を伯父にぶつけた。
「ラミーとバッカスを三人にあげたのはおらだもの」
「え?」
「三人とも、親の酒をくすねて飲むような悪ガキでね。別に酒が飲みてえわけではなく、三人で悪さをするのが楽しかったんだよ」
叔父は休みになるとJヴィレッジに足を運び、サッカーを眺めるのが趣味だった。特に女子サッカーには目がなく、母がみっともないからやめてくれと言うとおなごのサッカーの何がみっともねえんだとやり返していた。
「酒飲みながらやれるほどサッカーは甘いもんではね、これで我慢しろってな」
三人は大切なサッカー仲間でありながら、かけがえのない友人でもあった。それを失ってしまった二人の絶望と挫折、後悔は想像を絶するものだった。
「しばらくは練習にも来なかった。無理もねえ、もともと仲が良かった者たちでサッカーさ始めた三人だ。それが一人死んでしまえば続けるのも辛かったべ」
だが三ヶ月後、二人は戻ってきた。
「驚くことに、二人して腕も足も一回り太くなった筋肉のオバケみたいになってた。キック力もジャンプ力も見違えるようだった。なしてそこまで鍛える必要さあるんだってくれえにな」
叔父はその理由がわかっていない様子だった。
「だども、あの二人が体を鍛えたいという気持ちは分かる。もっと遠くさ行きてえのさ。ウメコ、一人では見れなかった風景、二人でも見れね風景が、三人だったら見れるかもしれね」
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