ラミーとバッカス

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 2004年3月14日、Jヴィレッジ。  いわき市をホームタウンとする女子中高生サッカーチーム、イワガールズは週一回はここで練習していた。 「でやあっ」  モヒカン頭の松長來未がセンターサークルから蹴ったボールがペナルティエリアの中に落ちる。 「うおおっ」  サーファーカットの佐竹奈緒が蹴ったボールはゴールエリアにまで達した。  センターサークルからゴールまで50メートル以上、女子中学生のキック力ではなかなか到達しない。  それでも、少しでも遠くまで。  そのためには今まで以上に体を大きくする必要があった。  忘れたふりをしながら、一日も忘れたことはない。  だから浜通りでサッカーをしている女子がいると聞けばすぐに会いに行った。  あの日遠くへと運ばれてしまった腕を、今度は決して離さぬために。
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