雪見の復讐

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雪見の復讐

 伊藤雪見は、自分が凡庸な人間だと認識している。  取り立てて美しくも醜くもない平凡な容姿。平均より低い身長。運動は苦手で、唯一得意なのは長距離走。物覚えも悪く、いつも叔父に怒られていた。  そんな雪見がある日突然、成政の嫡子として認知され、白羽家に引き取られた。まるでシンデレラのように雪見を取り巻く環境は一変した。勉強に不安な箇所があれば塾に通わせてもらった。風邪をひいたら病院に連れて行ってもらえた。テストでいい点を取ったらご褒美にケーキを買ってもらえた。  だから、雪見にとって人並みになるための勉強は至極当然のことであり、努力とも呼べないものだった。他人の倍勉強してようやく追いつける。学年で五位以内に入るためにはもっともっと勉強しなければならない。それを辛いと思ったことは一度もなかった。勉強すれば成績は伸びる。絵を上手く描ければ継母が喜んでくれる。単純な雪見はそれで満足していた。  ーーだから、自分の努力が誰かを傷つけるなんて、雪見は夢にも思っていなかった。
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