色川浅葱

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 仕様変更に合わせて作り直していた浅葱が、ふと周囲を見ると誰もいなかった。  終電前に社員たちがいっせいに帰っていた。 (え? 誰もいないの?)  それに気づかなかった浅葱だけが仕事をしていた。  先に帰ろうとすると引き留めるのに、自分たちが帰るときは何も言わない。  こっちが忙しいときは手伝ってくれない。  情けないような悔しいような。  肩を落とし、涙をこらえた。  会社を出た時、時刻は深夜1時を少し回っていた。  タクシーで家に帰ると、大急ぎで夕食を食べ、シャワーを浴びて寝た。  こんな状態で熟睡できるわけがない。  うつらうつらとしただけで朝になる。  胃もたれしているから、朝食抜きで支度して駅に向かった。  決まった時間よりすでに遅れ気味。  なのに、駅についたら電車遅延。 (何でこんな時に!)  体調も悪い。  後ろから誰かに小突かれた。  スマホにメッセージ着信。  誰からだろうかとタッチして中を見る。  高校の同級生目黒早弥からだ。 『念願だった個展を開催します。ぜひ来てね』――  これが、飛び込むまでに起きたこと。
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