あやかし恋女房昔語り

2/26
170人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「これをつまみに一杯いただくね。何にしようかな……。さっぱり飲めるものがいいな……」  浅葱がドリンクメニューを見ながら日本酒のソーダ割りにしようか普通の日本酒にしようかと迷っていると、レンゲちゃんが「いいものがあるよ」と、瑠璃色の一升瓶を出して見せた。半透明の繊細な瓶だ。 「これ、スパークリング清酒なんだけど、飲んでみない?」 「スパークリング清酒?」 「うん。お祝いっぽくなるでしょ」 「確かに、シャンパンみたいかも。それ、ください」 「はいよ」  レンゲちゃんは、瑠璃色のおちょこグラスを出した。器が百合の花を(かたど)っている。それも綺麗。 「炎加、お願い」  レンゲちゃんが一升瓶を炎加に手渡すと、炎加がスパークリング清酒の栓をスポンと抜く。それを再びレンゲちゃんの手に返す。あざやかな連携プレー。 (仲がいいんだな……)  浅葱も炎加のような素敵なパートナーが欲しくなった。  もちろん恋人がその最高峰だが、炎加のようなビジネスパートナーでもいい。  何も言わなくても阿吽の呼吸で、浅葱の必要とする絵筆や絵の具、水を渡してくれたら最高だろう。  レンゲちゃんがお酒をおちょこに注いだ。 「はい、どうぞ」  キメ細かな気泡が次々と底から上昇しては、空気に触れてパチンと弾ける。  ――シュワシュワパチン。  弾けるごとに表面がキラキラと光り、まるで祝砲のようだ。 「ああ、綺麗。本当にシャンパンみたい」  飲むと口の中でもパチンパチンと弾ける。爽やかな辛口の飲みやすい清酒だ。 「はー、美味しい」  この一杯で恍惚となる。 「では、炎加さんの贈り物をいただきます」  最初に手を合わせてから、小ブナのスズメ焼きをサクッと食べた。  カラリと揚がり、小骨までサクサクと食べられる。甘辛のバランスも丁度いい。 (本当に、我が家に来てほしい)  毎日食べたい味。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!