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話し合いの末、今夜は私が作った方のケーキを消費することに決まり、パパは買ってきたホールケーキを大事そうに冷蔵庫にしまった。
「ねえ、パパ」
冷蔵庫の扉を閉めるときに見えた横顔に、私は声を掛ける。
「結婚記念日でもないとこんなこと恥ずかしくて言えないけど……いつも感謝してるわ。今まで四年間もありがとう」
「どうしたのさ、急に。そんなの夫婦なんだからお互い様だろ? こちらこそ感謝してもしきれないよ」
「そう?」
「そうだよ」
「ね、パパ」
「ん?」
「これからもよろしくね」
「ああ、よろしく」
二人して、はにかんだ。
「……って、ありゃ? 瑠花どこ行った?」
「ん? あら、本当ね」
言われてリビングを見渡してみるが、そこに小さな娘の姿は無かった。
「トイレにでも行ったんじゃないかしら」
そう言いつつも、少し不安になり隣の寝室を覗き込む。すると、リビングから漏れる光のほかは真っ暗なその空間で、何やらガサゴソと怪しげな音がしていた。
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