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「瑠花ー?」
「あ! ママ! まだみちゃダメだよ‼」
目を凝らしてみると、暗い寝室で物音を立てていたのはやはり瑠花だった。自分の幼稚園カバンを漁っている。
「みちゃダメだってば‼」
お目当てのブツを発掘したのか、何やら白い物を片手に瑠花がこちらへ向かってきた。そのまま背中をグイグイと押し、私をリビングへと追い立てる。
「パパー! こっちきてー!」
トイレの方を確認していたパパが、ほっとした表情で近づいてくる。
「なんだい」
「はい! これ!」
ニコニコと笑いながら、瑠花は私たち二人の目の前に手に持っていた白い物を広げた。
「パパ、ママ、けっこんきねんび、おめでとう~‼」
瑠花の手に握られていたのは、私たち一家三人が描かれた絵だった。画用紙いっぱいにクレヨンが走り、三人とも溢れんばかりの笑顔をこちらに向けている。
驚きのあまり言葉も出ない私とパパを見て、瑠花はしたり顔でニンマリと笑った。
「じゃっじゃ~ん‼ どう? びっくりした?」
「おーすごいな! 上手に描けてるじゃないか!」
パパはものすごく嬉しそうに、瑠花を抱き上げる。きゃっきゃとはしゃぐ二人の声が私の鼓膜にも届いた。
……ねえ、聞いた? じゃっじゃ~ん、ですって。
やっぱり、血は争えないものね。
テーブルの上のサルビアの花が、少し揺れた。
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