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第2話 誕生日にはメスシリンダーを
私は誕生日というものがあまり好きではない。
いや、より正確に表現するなら好きではなくなってしまった、と言うべきか。幼い頃は、無条件で他人にチヤホヤされ、好きなものを買い与えてもらえ、甘いケーキが夕食後のデザートに出てくるこの日が人並み程度に好きだった。なんなら毎日が誕生日になってくれれば良いのに、と願ったことも一度や二度ではない。
そんな素敵な日を嫌いだと感じるようになったのはいつからだろう。
別段、これといったきっかけがあったわけではないように思う。ただ、歳を取るにつれて徐々に苦手意識が増していったのは確かだ。それは三十路を目前にして、いわゆる結婚適齢期的な賞味期限が近づいて来るのを如実に感じていたからか、あるいは年齢というものが、日々の仕事に忙殺され社会の消耗品として人生が擦り切れてしまうまでのメーターのように感じられたからか。もしかしたらその両方かもしれないし、どちらもてんで的外れなのかもしれない。
けれど、明らかに焦燥のようなものが心を逆撫でする日のように思われたのだ。
だから、私は誕生日があまり好きではなくなってしまった。
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