第1章

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第1章

 年中強いサルヒが吹き数多の草花が咲き誇る島テンガルは、悠久の時の流れを太陽と陸地の間で雲の中に紛れながら漂い続けている。  そこは上下二つの島から成り、何万本もの太い木の根が根の森(ウンデス・オィ)となってふたつの島を繋ぐ。  上テンガルの中心には標高千メートルほどの岩山があり、そこから湧き出る清水は川をつくり落泉(ひせん)となり下テンガルへと落ちていく。       澄んだ水と温暖なサルヒに富む上テンガルは数多の鮮やかな植物を育て、サルヒを含んだ上質な飛泉は民の生活を豊かにした。  テンガルに住む民は生まれて三度目の朝を迎えると、兄弟からフーツァオと呼ばれる道具を授かる。上テンガル北西部にしか咲かない綿花で紡いだ糸を、ナラの瘤に通したものである。  振り子のような形をしたそれで円を描くように振り回すと、旋風状のサルヒを生み出すことができる。そうして生み出されたサルヒは意のままに操ることができるのである。  彼らはそれを操り生活の助けとし、彼らはそれを時に心の友として静かに暮らしてきた。  これはそんなテンガルの民たちが辿った運命を記した物語である。
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