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時は1980年代。
世はまさに大前世時代である!
オカルト雑誌には前世の仲間に呼びかける数多の投稿が飛び交い、日常から飛び出した非日常への憧れに前世少女たちは胸を焦がしているのである。
前世からの使命で世界を救うとか、ちょっと重いような気もするなって、2010年代に生きた俺としては思わないでもないなぁ。
チートを手にいれてもさ、のんびり幸せに暮らしたいっていうのがスタンダード? 少なくとも有名どころではそういうのもよく目につくよね。
そもそも、因縁を持ってるような人生を送っていなかったわけだし。
……子供の頃はそれの名残があったから、中二病的に憧れていました! ごめんなさい! 前世嗜好から来世嗜好に変わりましたよっ!
けど、「前世の俺」より10歳くらい年上だった女性たちが、「今世の俺」の前では10代の女の子たちなんだよね。
「はぁ……パソコンねえ、ネットもねぇ、スマホタブレット何もんだ?」
20年代初頭に生きていた80年代生まれが、70年代生まれの中学生になって80年代を生きるとか無茶ぶりもいいところなのだ。
前世の記憶が覚醒してから、すっかり日常が退屈になってしまったのである。
ああ、令和は遠くなりにけり。
「すまほたぶれっとってなに?」
それを隣で聞いていたクラスメイトの女子が声をかける。
「前世の世界の持ち物……あれがないと元気がでない……」
今の俺は年頃の中学生だ。外聞など気にせずに前世のことを交えて愚痴をいう。
「前世の持ち物……あなたも……そうなの?」
急に声を落としたクラスメイトは、声を潜める為に俺に顔を近づけて囁きかけてくる。
くっ、女の子にこんなに密着されるなんて!
「前世の記憶が覚醒したけど、まだ神器がなくて力が発揮できないのね?」
ん? なんだ、この展開は。
スマホやタブレットが神器?
「私はアトランティスのミネルヴァ。ついに出会えたわね、前世を持つ仲間に!」
その日、俺は前世を持つ少女に出会った。
確かに俺には前世の記憶がある。でも、30年すれば追いつく世界で、特別な能力チートもなければ、内政・技術チートのしようもほとんどない。
せいぜいが将来有望な業界に入るために勉強するだけだ。
ミネルヴァさんが本物のアトランティス人でも、ただの前世少女でも、なんていうか期待に応えられるんだろうか?
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