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クォーツの言う通り、確かに俺はこれ以上ないくらいのトラブル体質ではある。
とはいえ現在に至るまでトラブルの積み重ねでなんとかここまで来れたのも事実だが……
「ちょっと離してください!!」
――――……!?
すると公衆便所までの道のりの途中、綺麗な女性がいかにも悪そうな男2人に絡まれているではないか。
これは乙女のピンチに仲裁に入れといわんばかりの展開。
こちらが希少種である限りはなんとかなるだろう。
だが俺は知っている。
ここで行けばクォーツのいう通りトラブルに巻き込まれる事を。
助けに踏み出しそうになったが一度冷静になって状況を見極める。
「金を返さねぇほうが悪いんだろーがッ!ちょっと事務所まで来い!!」
俺は聖人でもゲームの主人公、ましてや救世主的なイケメンでもない。
ここでクォーツ達を呼んできても良かったが『血祭りじゃーゲラゲラ』という展開になり結局トラブルになるのは目に見えていた。
うん。金を返さないほうが悪い。
だが女性を見捨て公衆便所に向かうが、その途中でも『ママ―……!!うぇーん!!』と泣いている女の子。
迷子か……いや、違う。これはトラブル臭しかしない。
さっきの女性がママだったらどうする。
俺はすぐさま近くにいた私設兵団の兵士を迷子の子供の元へ誘導し、華麗な立ち振る舞いで事なきを得た。
その後も喧嘩やひったくりなど様々なトラブルに巻き込まれそうになったが、
「なんなんだよ……!!」
ことごとく全ての脅威を回避して何とか公衆トイレに駆け込んだのだ。
なんたる怒涛のトラップだ……。
考えすぎかもしれないが運命が強引にトラブルへ誘おうとしているのは気のせいか。
そうして俺は用を足しながらため息を一つ。
ただ、色々見放してしまったのも事実で少しばかり罪悪感が湧いてくる。
「ふぃー……ん……」
そんな罪悪感と爽快感の狭間でズボンを上げた時、ポケットに違和感。
取り出してみると、クォーツ達の服を買った時にレシートと一緒に貰った抽選券が入っていた。
その裏を見てみれば抽選会場は公衆便所のすぐ向かいだ。何か色々当たるのだろうか。
こういうクジ引きみたいなのは昔から好きだ。地元の祭りでも馬鹿みたいに引いてたっけ。クジ運は昔から強いのだ。
それにうちは貧乏兵団、食材とかが当たるかもしれない。
「……いってみるか」
景品の内容を見るだけならトラブルに巻き込まれないだろう。
巻き込まれそうになったら即退却。これで問題あるまい。
そんな考えの俺は好奇心半分、ついでに大きい方もして公衆便所を後にして抽選会場に向かう事に。
――――……そして、
「はーい!!大当たりでーす!!おめでとーございまーす!!」
公衆便所の対面にある仮設テント前、そこで今まさにメイド姿の係員が超絶笑顔でやかましいベルを鳴らしている訳で。
決してメイド服に釣られて抽選を受けた訳ではない。
俺の時代では画面の向こうか都会にいかなければ到底拝む事のできなかった生メイドに決して発情した訳ではない。
行列になっている俺の後ろの人達もザワザワと色めきだっている様子。
「……まじかよ。当たっちゃった」
狙いは外れの参加賞である『パン詰め合わせ』だったのだが、本当にクジ運が良かったのだろうか。
俺の前の人達はことごとく参加賞だった事にてっきり俺もそうだと思ったんだが。
「では特賞の景品はこちらでーす!!どうぞー!!」
そうして胸元が開けたメイド服のイヤらしい女性が手渡してきたのは1枚のチケット。
俺はその豊満なおっ……チケットに目をやると見覚えのある名前。
「有罪三姉妹って……」
「いやーお客様!それはまさにプレミアムチケット!!転売は禁止ですよ!?おめでとうございます!!さあ次のお客様どうぞー?」
有罪三姉妹ってパドとルビーが好きなアイドルのチケットだったよな……
確かに景品一覧の一番上に『有罪三姉妹プレミアムシークレットライブチケット500名様』と書かれているが。
なかなかの確立で当たるじゃないか。
スピリアンの出身のグループだけあって地域貢献しているのだろう。
ルビー達にあげようかと思ったが、そのチケットはペアではなく1名分。
そんな事を考えているとメイドさんは景品一覧のプレミアチケットの部分にバツ印でテープを張っている。
これが最後の1枚だったのか……
運がいいのか悪いのか、俺はテント前から少し離れチケットの裏面を確認していると、
「今のが最後のチケットだった……だと」
そこには顔面を蒼白にさせている女性がいた。
「そんな馬鹿な……これは悪夢なのか……終わった」
と地面に土下座をするように崩れ落ちてしまい辺りは騒然。
「もう駄目だぁ……生きていけないぃ……仕事したくないぃ……」
そんな訳の分からない事を言ってその場でうずくまったままの彼女に対し、メイドさん達は慌ててテントから出てくる始末。
このままじゃ抽選会どころじゃない……。
これはもはやトラブル臭しかしないと思った俺がとった行動はひとつだった。
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