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一月後、明日に結婚式を控え天河の雨宮家に神戸の家具屋が荷物を搬送してきた。
真綿の布団とベット、螺鈿のタンスと化粧台、紅白の大きなリボンに飾られたそれらには綺麗なカードが添えられている。
明日の為に天河に来ていた雪南がその荷物に驚きながら慧の横顔を見る。
「こんな高そうな家具、誰からの贈り物かしら?」
慧も不思議に思いながらカードを開いた。
『ご結婚おめでとうございます。
我等ご主人と雪南さんの幸せを心からお祝い申しあげます。』
慧はそのカードを読み上げながら気付く。
「雪南・・
誰からの贈り物だと思う?」微笑みながら雪南の顔を見た。
雪南は困った顔でカードを覗く。
けれど送り主の名は記載されてはいない。
「これ・・
キンとその仲間からだ・・
それに微かに感じるこの気は祠の龍様の物・・」
そう言うとカードの裏面を黙って見つめる。
そこには懐かしい『炎』の入り口の風景が画かれていた。
「キンちゃんと仲間?」
雪南も慧の見つめるカードの裏面を見る。
「私・・この場所を見たことがある・・」
「ここは僕の爺さんの店・・
そして僕の店だった」
「だった?」
「ん・・
今は君の両親の店・・」
「えっ?
でも何だか違う場所みたい」
「君が生まれた頃、正式に店を君の両親の名義に変えたからね。
あの後、台風の被害やら何やらで入り口を含めて外装を変えたんだ・・」
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