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「美也子、何でジュニア迄天河に行くんだ?
雪南を嫁に取って行ったのに、その上息子まで・・」
ルイは朝からそう言いながら美也子の後を付いて廻る。
「はいはい、もう一週間も同じ話を聞いてるわ。
ジュニアが行くのはたった一月でしょ?
一生天河で暮らす訳じゃないじゃないの」
美也子は呆れながら朝食の支度にかかる。
「其よりもうお店に行く時間よ。
早くご飯を食べて支度をしてくたさいな」
「だけどな、ケイも酷いと思わないか?
何で僕に一言の相談もなく決めるんだよ」
「仕方ないじゃないの。
アメリカからキラさんとマリアさんか戻られるんでしょ?
何でも大阪の大学に教授として招かれてるらしいってジュニアが」
「だから何なんだ?
キラだって先に神戸に寄るべきだろ?
天河なんか空港から遠いじゃないか」
食卓テーブルで箸を握りながらルイはまだ美也子に愚痴を言っていた。
(良いのかい?
もう少しお父さんと話をしなくても・・)
魔夢が天河へ持って行く荷物を詰めるジュニアに声を掛けた。
「良いんだよ。
パパは何を言っても反対するもの」
(仕方ないよ、それが『親』ってものさね)
「魔夢ちゃんも?」
(あたしはあんたの守り手じゃないか、親なんかじゃ・・)
「いいや、ちゃんと二人めの母さんだよ。
今だってこんなに心配してくれてる。
僕は何時も感謝してるよ」
荷物を詰め終ったバッグを閉めながらジュニアは魔夢に微笑んだ。
(もう、この子ったら・・
そんな事言っても何も出やしないよ)
魔夢は少しだけ嬉しそうに彼を見つめる。
龍様に言われジュニアの守り主となって一年、嫁に行ったゆっこは慧に守られ幸せにしている。
今は昔のゆっこによく似たジュニアが魔夢の全てだと言っても過言ではなかった。
「ジュニア、ご飯よ、早くしないと電車に間に合わないわよ」
美也子の声にジュニアはバタバタと部屋を出る。
テーブルに座り用意された朝食を口に運びながら父を見る。
ルイはあからさまに『気に入らない』顔で新聞記事を見る。
「あっ美也子、この記事・・
渡辺くんだ!」
「あら、渡辺さん?
フランスから帰って来たのかしら」
ルイと美也子は懐かしそうに顔を見合せる。
「渡辺さんって?」
ジュニアが聞くと美也子がジュニアを後ろから抱き締めた。
「貴方達を流産から助けてくれた方よ。
パパや慧さん、キラさんのお友達でもあるわ」
そう答えた。
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