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「そうかぁ・・
皆帰って来たんだなぁ・・」
ルイは目を細めて昔を懐かしむ。
そのすきにジュニアは荷物を抱え家を出た。
昼過ぎ、天河の雨宮家の門を潜ると真っ直ぐに離れの妹を訪ねる。
雪南はジュニアの顔を見ると嬉しそうに走り出した。
(あっ!
ダメダメ、転んだらお腹の赤ちゃんが!!)
魔夢が慌てて雪南の側に寄った。
「魔夢ちゃん!来てくれたの?
逢いたかった」
真夢に身体を抱き抱えられた幸南をあきれ顔で見ながら、ジュニアはゆっくりと二人に近づいた。
「何だよ、僕を見つけてかけて来たんじゃなく、真夢ちゃんかあ」
そう言うと真夢に目配せをする。
真夢は幸南を庭の椅子に座らせて傍に座った。
「幸南、僕慧兄さんの書斎に用があるから、お前は真夢ちゃんとおしゃべりでも楽しんで」
そう言い残し母屋へと向かった。
「ゆっこ、つわりは良いのかい?
こんな田舎じゃ赤ちゃんの着物だって揃えるのは大変だね」
真夢は母親のように心配顔で幸南を覗く。
「大丈夫、普段着は神戸のママや天河のおばあちゃんが買って来てくれたし。
晴れ着は・・
真夢ちゃん、ちょっと部屋に来て」
そう言うと真夢の手を引いて自分たちの部屋に招いた。
「これ・・」
幸南は縫いかけのベビードレスを真夢に見せる。
「あら!可愛いじゃないか!
真っ白のレース・・ってこの布・・」
「気づいた?
真夢ちゃん達がくれた
ウェディングベールの布よ。
これ、真夢ちゃんの糸で編んでくれたのよね。
結婚式の時、ジュニが急にベールが変だと言ってこれにしろって。
頭に付けるテイアラの真珠は金ちゃんのだし、披露宴のケーキはお手製で、あれはきっと笹羅ちゃんでしょ?」
「なんだい・・
バレちまってたのかい」
真夢はテレながら幸南が撫でる晴れ着を見た。
「ほかにもあれ・・
ベットカバー」
あの時お金で買える物だけではなく、自分達で作れる物も贈りたいとキンと真夢が提案し、キンは銀牙とティアラを、真夢と鯰太郎はベールとベットカバーを作った。
「家具屋さんが運んでくれて此処に配置が済んでね、このカバーに触った時思い出したの。
真夢ちゃんの名前とぬくもり・・
私を守る為に貴女のお腹に巻かれた布の優しい手触り」
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