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翌日、ルイはいつものように開店準備を始めた。 この店を引き継いではや18年になる。 ケイがマスターだった頃にくらべ客も増えた。 まあ殆んどがモデル時代のファンや仕事仲間だが、それなりに繁盛していると言っても良かった。 『カラン!』急にカウベルがなる。 ルイはカウンターを出ると棚の奥にしまっておいた『癒しの水』を手にした。 目を閉じると神経を研ぎ澄ます。 人間とは違う気配のする方に向かって話し掛けた。 「お客様、せっかくいらしたのに申し訳ありません。 前の店主は今は天河の龍倩洞(りゅうせんどう)にて依頼をお受けしております。 此方でお受け出来るのは僅かな安穏のみですが、良ければこれを・・」 そう言って宙に『癒しの水』を散いた。 「冷たい!! 何年かぶりに来ていきなり水をかけるなんてどういうつもりだよ!」 ルイが目を開けると、そこには英国紳士のような姿をしたキラがマリアと二人で立っていた。 「キラ! お前天河の慧の所に行ったんじゃ・・」 ルイは驚き半分、嬉しさ半分と言う顔で二人に近づいた。
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