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「そうか・・でも僕は・・」 ルイは思わず美也子の顔を見る。 「良いのよあなた、私に遠慮なんてしなくても。 店は私とジュニアで何とかやれるし、その『仕事』だって毎日って訳じゃないでしょ」 「あの・・ 申し訳ないママ・・ 僕は店は手伝えそうもないよ。 実はさ僕、慧兄さんに付いて祓いやの修行を始めたんだ」 「なんだって? ケイ、どう言うつもりだよ! 雪南だけじゃなく、ジュニア迄俺達から奪うつもりか?」 ルイは慧に掴みかかる。 キラと渡辺が慌てて留めに入った。 「何も話さなくて悪かった。 実はジュニからはもう10年も前から相談は受けてたんだ。 初めはキンが見えてるし話しもしてたと打ち明けられて・・ そのうちに良くないものが襲って来るから守る法を教えろと・・ そしてこの頃は、ジュニアに助けを求めて来るものの浄化力や癒しの術を教えていたんだ」 「じゃ、天河であのものたちの頼みを受けいるているってのは、お前じゃなく僕の息子・・」 慧はすまなそうにルイを見る。 「雪南の事もあって、どうしても僕の口からは言えなくて」 「パパごめんなさい。 何度も打ち明けようと思ったけど、僕のせいで雪南と慧兄さんの結婚がダメになりそうで言えなかったんだ。 でも僕はパパの力を尊敬してる。 助けを求めて来るものの中には、パパから癒しの『水』を貰ったと喜ぶものもたくさんいてね。 その話を聞く度に僕はパパの息子に生まれた事を誇りに思ってきたんだ。 それに、慧兄さんにも何度もよく考えろと言われたけど、僕はやっぱりこの『仕事』が天職だと思えるんだ。 だから、頼むよパパ・・」 ジュニアの言葉にルイは何も言えなくなった。 「あなた・・ 今の世の中でいったい何人の父親が自分の息子に誇りに思うって言ってもらえるのかしら? それにジュニアはあなたによく似て頑固者よ、一度言い出したらちょつとやそっとじゃ後になんて退いたりしないわ」 美也子が微笑みながらルイの手を握る。 暫く黙っていたマリアがルイの肩に手を置いた。 「ねえルイさん、私達が別れる前の事件を覚えてる? あの時、私はこの人を慧さんの所に行かせてあなたや渡辺さんと東京の美也子さんの所に戻ったわ。 でも本当は心配で胸が張り裂けそうだった。 だけど、慧さんの所に戻りたかったのはきっと貴方も同じだったって思ってた。 でも後から貴方が私に言ってくれたわ。 「僕達には其々に出来る事がある。 今僕がしなければいけないのは美也子の傍にいてやる事だって。 その時思った、この人は強い人なのだって。 私ね、あの時の貴方の言葉でこの人の妻になる事を決めたわ。 私の出来る事は一生この人の傍にいる事だって」
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