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「分かったよ。 女性二人に言われたら勝目はない。 僕も『仕事』には思い入れもある。 それに欲しいものも有るからね」 「分かってるよ。 裏の家は君が好きに使うといい。 『仕事』を再開するなら地下の『仕事場』は必要になる」 慧がそう言うとルイはキラを見る。 「なんだよ、僕はあんな所には住む気なんか無いよ。 家ならもう買ってあるし、あそこは慧の思いが詰まってるじゃないか」 「キラ、昔の裏の家はもう無いんだ。 何年か前の台風でこの店も裏も被害にあってね。 その時に裏の家は天河に移築したんだ」 「あっ、あれ・・ 慧夫婦が住んでる離れの家か?」 「道理でなんか見た事のある気がしたんだわ。」 キラとマリアは顔を見合せる。 「今の家は新しく・・ といってももう10年位前だが、立て直したものなんだ。 僕達が帰って住んでも良いし、ジュニに住んで貰ってもいいと思ってね」 「本当か?ジュニアにくれるのか?」 「ああ、先々彼がどう言う道を選んでも隠れ家は必須だからね」 慧は久しぶりに見る子供のようなルイの顔にフッと昔の『炎』を思い出す。 若かった三人其々の悩みや思いが頭の中を駆け巡る。 (どうやら話しはついたようだね) (そうだな。 ご主人嬉しそうだ) 魔夢とキンは其々の主人を見ながら嬉しそうにそう言う。(キン、あのイケスカナイ男にも守り手はいるのかい?) (イケスカナイ・・? もしかしてキラの事か?) (キラ・・ あいつはあたしを踏み潰した子供に似た『毒』みたいな臭いがする) (「毒」・・ あいつは守り手なんか必要無いんだ。 あいつの隣にいるマリアが守り手だからな) (マリアって人間じゃないか。 それになんの力もない) (俺達から見たらなんの力もない人間に見えても、あの男には違うのさ) キンは久しぶりに集まった主人の友人達を見ながらくるくると周りを泳ぐ。 (何が違うんだい) (んーん 愛してる・・かな?) (愛してる?) (そうだな、お前が昔のゆっこやジュニアに寄せる思いに似たものだ) キンはそう言ってからルイと美也子の周りを泳ぐ。 (この二人も同じだった) 魔夢はジュニアや慧、そして慧の周りで笑っている人達を見る。 (愛してるなんて・・ あたしは龍様に言われたから守り手になっただけだ) そう言うと姿を消した。 (相変わらず素直じゃない) キンは笑いながら慧の傍に寄った。 「キン、今日はありがとう。 僕が天河を留守にしてる間、傍で雪南と子供を守ってくれ」 キンにだけ聴こえる位い小さな声で慧はそう言うと仲間たちの元に戻る。 キンは嬉しそうに背鰭を震わせると雪南とその子供の待つ天河へと姿を消した。
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