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   コーヒーを啜りながら今日のスケジュールを音読させられ、スーツをハンガーに掛けなかった事を叱られ。親か。俺はアンタの子どもか。 「折角のオーダースーツなのに台無しです。勿体ない」 「じゃあ今夜から部屋をダブルかツインに替えて三隅さんが世話してくれます?」 「……………」 「ついでにファブリックを青に変えてくれるように掛け合ってくれると嬉しいなー」  またすぐ睨む。どうせ肚の中は『このバカボンが!」とか『秘書雇え!』とか、不満ばっかりなんでしょうね。すみませんね。  タブレットを起動しながらコーヒーをぐっと飲み干し、チェアに背中を預ける。 「11:15にはレストランの前にちゃんと居ますから後はお気遣いなく」 「怒ってるんですか」 「なんでです?怒る理由なんてないですよ」  物言いたげな口元を隠すように、さっさと部屋を出て行く三隅さんの背中を横目で見届けタブレットでニュースの見出しを追い掛ける。  シンガポールは日本よりずっと平和。街は綺麗で洗練されてて、諸々のメリット・デメリットを考慮したとしても次兄・紀之がここでの法人設立に拘ったのも解らないでもない。実際ハブとしてよく機能しているようだし、研究開発メンバーからの不満も上がって来てない。今のところは。  レオン氏の期待は大きいし、外交は大事。正月早々のお呼び出しも致し方ない。こっちでは春節の方が盛り上がるので、日本の伝統を持ち込んだってしょうがない。  でも雑煮が食いたい。
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