終章

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   年明けから、由貴は本格的にシンガポールに拠点を移す。勿論俺も一緒に行く事になるけど、父・ナジャが心配と言えば心配かも知れない。由貴も気に掛けてはくれるけど…… 「ホントについて来てくれるの?海外赴任は断る権利もあるよ?」 「由貴は遠距離になって平気なのかよ」 「ラインでもスカイプでもフェイスタイムでも顔見て話せるし、ディル◯再購入に同意してくれるなら何とか」 「阿呆。おもちゃに俺の代わりが務まるか」  いや、おもちゃならまだしも、俺以外、男も女も一切信用出来ない。特に酔ったりした日にゃ……!  泣いて寂しがるナジャより俺にはそっちが心配だ。薄情な息子で悪いとは思うが、巣立ちを喜んでくれ。 「ナジャさん、寂しそうだった。アイメイクがドロドロになってた」 「ヤツはすっぴんの方が綺麗だからいいんだ」 「ファザコン♡」  由貴が七生くんと晃介くんに俺を紹介してくれたように、俺も父を紹介した。と言っても、時折駆り出される週末の手伝いに勝手にくっついて来たせいだが。  人間観察が趣味で賑やかしいのが好きな由貴は、父が経営する場末感満載のスナック(殆どゲイバー)にもするする馴染んで人気者になってしまった。国際色豊かな客層にも全く怯まないところは流石だと思ったが、俺のバーテン姿に欲情して襲われかけた時には往生した。色んな意味で両刀な相手との付き合いは中々骨を折る。
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