終章

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   仕事は順調だ。医療用ロボットの小型化はどこまでも進むし、大口スポンサーのレオン氏はドバイでも一山当てて安泰だし、そのうち『小さな外資系』もテレビで見るような『華々しい外資系企業』になるのかも知れない。  由貴は野望のないお坊ちゃまだけど、社の顔として外交するのは嫌いじゃないらしく、社交的かつ八方美人な性格を有効活用している。これを把握してポジションを決めた社長(長男)・専務(次男)・常務(四男)は有能な方々だと思う。 「あっくんが切り餅送れってー」 「こないだ送ったとこなのに………」 「餅ばっか食ってるから医者のくせにぶくぶく肥えるんだ」  三男・敦啓(アツヒロ)氏は医学博士でやはりシンガポール在住。研開チームのトップで顔面は由貴と同じだが、ふっくらふくよかで内向的な方だ。末っ子の瀬那さんも医大生だが、学校から程近いこのマンションを狙って早く退去しろとせっつかれているらしい。  俺は新居用の青いファブリックほか、青色グッズを見つけてはシンガポールに送りつけている。 「今日はP社の取材です」 「ビジネス総合誌の表紙になれる日はいつ来るのか」 「遠からず来ますよ」 「“三隅さん” の目はバイアス掛かり過ぎ」  それは仕方ない。  俺は出会った時から由貴の信奉者なんだから。
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