終章

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  「南国だからってお腹出して寝ちゃダメ!生水も飲んじゃダメ!」 「うんうん、解ったから」 「ロキソニン、あっちでも処方して貰える?」 「頭痛は持病じゃなくなったから大丈夫」  長年悩まされていた俺の頭痛肩こりは、どうやら就寝中の歯軋りおよび食いしばりが大きな原因だったらしい。由貴に指摘され、薦められた歯科で歯軋り用マウスピースを作って以降、嘘のようにロキソニンのお世話にはならなくなった。 「親でも気づかないとこに気づくなんて愛ねぇ」 「ふふ」 「まっ!やらしい子!」 「時々帰って来るから。父ちゃんも節制するんだぞ」  運転席の父の肩に頭を載せるとトマトの香水の匂い。細い肩に年を取ったなーとは思うけど、ナジャメイクしなくても綺麗な父で良かった。でもグスグス泣き続けで腫れてるから、今夜はいつもより盛らないとな。  空港では、珍しく由貴が先に待っていてくれた。 「ナジャさん!」 「ユキちゃん、不束な息子だけどよろしくね……!」 「任せて♡」  真冬の日本を飛び出し、雨季のシンガポールへ。  俺は由貴にどこまでもついて行く。
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