蛮族lv9999があらわれた!

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蛮族lv9999があらわれた!

三人称視点です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー ((テレポートッ!!)) 景色が移り変わる。 白い法衣を纏った神官のリズの手をとり一目散に逃げていた。 今まで東の森に異変はなかった。今日だって特に変わったことはなかった。 ゴブリンの討伐依頼を受けたCランク冒険者パーティ【赤龍の爪】は、お調子者でいい家の出で前衛を務める"戦士"のクラウン・アリスター。彼がリーダーを務め、法衣を纏った神官のリズ・ウェルトと魔法使いの私、ローズ・クエルティンが後衛を務めるバランスの取れたパーティだった。 登録して数ヶ月でCランクまでランクを上げ期待の新人として評価され、街に襲来した飛龍の討伐をAランクパーティとともに手伝い見事に補佐してみせたことからBランク昇格も近々だった。 だから私達は、緊張感に欠けていたのかもしれない。 良家出身で幼い頃から英才教育を受けた天才戦士のクラウンが敵を迎え撃ち、私が魔法で焼き払い、リズが回復魔法や補佐魔法を使いサポートする。 無敵だと思った。 飛竜だって高位の冒険者がいたがそれでも倒してみせた。 まさか強力なモンスターが東の森に現れるなんて思ってもなった。 最初はリーダーのクラウンがゴブリンの食事の跡、痕跡を見つけ足取りを探していた時に始まった。 南側、遠くには龍が住むという山脈がそびえる方角に突然とてつもない強大な存在が現れた。 遠くだった。リーダーのクラウンは魔法の才能を持たなかったから魔法使い独特のオーラというものを感じなかったらしい。私達魔法使いは、魔力を感じる上でそれぞれの生き物が持つオーラというものを知る。 例えば人間であれば青い色、龍であれば赤、魔物であれば黒といったくらいだ。 森の中に現れたそれは人間だった、でも人間とは思えないほどの膨大なオーラと、純粋な人間ではないようで青いオーラの周りに赤や黒のオーラが舞っていたいた。 観察していると急激にオーラが膨れ上がった。 明らかにやばい。 そう考えた瞬間森が消失した。 黒い閃光が森を火すら起こさず消しとばし凄まじい爆音が辺りを包んだ。 私は二人に一旦街に戻り応援を呼ぶなり、報告するなりした方がいいと進言した。 だが二人は聞く耳を持たなかったし私も強くは止めなかった。 今までも上手くいったし今回だって上手く行く、そんな甘い考えがあったんだと思う。 ◇ グチャッ!! その光景が信じられなかった。 だからこそその光景をみた瞬間、私の頭の中に先ほどの戦闘というにはおこがましい。出来の悪い寸劇を思い出させたのだった。 森をかき分け黒い閃光のほとばしったあたりまで来た私を出迎えたのは、イビルティーを貪り食う巨大な何かだった。 イビルティーといえば魔界の住人である悪魔が召喚する腐敗した肉体をもつ鹿型の下級悪魔でそれでも単体でBランク。近くにはそれを召喚した悪魔、少なくともAランク推奨とされる敵が潜んでいることは確かだった。 イビルティーの腐肉を貪り食う大男はただただ不気味だった。 どうやらこちらに気づいたようで振り向いてわかったその姿は人間そのものだったが、オーラは魔物のようだった。 腐肉を貪り食う巨大な人間がただの人間のはずがない。 人間であって人間じゃない吸血鬼に身を連ねるものかもしれない。 見た感じ山賊か未開の地にすむ蛮族のようにしか見えない汚らしい野蛮な格好をした大男は、目に止まらぬ速度で迫ったクラウンに動じずただ棒立ちになった。 突然切りかかった彼には驚いたものの、討伐しようとは思っていた。奇襲は成功した。 最初は勝ったと思った。何せその大男はうわの空で棒立ちで手には禍々しい剣を手にしていたが、構えているわけではなくだらしなくただほんとうに突っ立っているだけだったのだから。 だから、だからこそ。 クラウンが吹き飛ばされて転がって動かなくなったことに私もリズも反応出来なかった。 いや反応は出来た。地面に何度も身体をぶつけて転がってきたクラウンに駆け寄った。でも頭は混乱していて、自分がクラウンを呼んでいる声が何処か人ごとのようでふわふわした感じだった。 絶対勝てないとわかっていたのに、私は変なリーダーシップを感じてリズにクラウンを回復魔法で治療するように頼んで、私は渾身の力を振り絞って火魔法を撃ち込んだ。 一発目は避けられた。 まるで初めて魔法をみた子供のような顔をしていた。魔法をみたことがないなんて有り得ない。知能が低くて沢山いる1匹見たら100匹いると考えろと言われているようなゴブリンだって魔法を使えるのだから。 そうだ。きっとこんな小娘に魔法が使えたのか。そんな侮りと驚きなのだろう。 二発目に打ち込んだ火魔法のファイアーボールは、避ける大男に吸い込まれるようにぶち当たり爆炎をあげた。天まで昇る炎の渦が大男の身を焼く……はずだった。 無傷だった。 装備も、露出した肌も火を弾いているように見えた。 瞬間移動してきたように見えた大男が横たわるクラウンの頭を潰すのは、一瞬だった。 私は大男がクラウンの死体を素手で解体して行く様を横目に震えながらリズの手を掴んだ。 一刻も早く、クラウンの死体に気を取られているうちに逃げなきゃ。 私は、ファイヤーボールを2回うち、魔力が減りすぎてふらつく体に鞭を打って空間魔法でテレポートを使った。 泣きながらクラウンに謝るリズを連れてのテレポートだった。 冒険者ギルドの建物内にテレポート出来たことを確認した私は、安心して気を失うことが出来たのだった。
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