1#よろしく盲導犬(アイメイト)

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 僕は、ラブラドールレトリバー犬。  名前は『ラルフ』号だ。  僕は、物心付いた頃には『パピーウォーカー』と言われる盲導犬(アイメイト)専門の育成ボランティアに愛情いっぱいに育てられた。  躾、優しさ、頑強な心。  ボランティアの叔父さんの家の中で暮らし、スクスクと盲導犬(アイメイト)の卵である僕は段々その才能を開花・・・  する訳無かった・・・!!  「ラルフ!何でここで糞するの?!」  「やだーカーペットにおしっこしたー!!」  「んもう!本がビリビリよーー!!」  とまあ、僕は盲導犬(アイメイト)の卵とは似つかわしくない、ヤンチャを『パピーメイト』の叔父さんの家の中でバリバリやらかしまくった。  だって、だーれも僕の事遊んでくれないんだもん。  毎日暇で暇で暇で暇でしょーがなかったんだもん!!    やがて大きく成長した俺は、いよいよ盲導犬(アイメイト)訓練施設へ預けられる事になった。  やっぱり、慣れ親しんだ『パピーウォーカー』のボランティアの叔父さんと別れるのは辛かった・・・  泣いてたもん。家族のみんな。  こうやって、この『パピーウォーカー』の家族は幾度も盲導犬(アイメイト)の卵との別れを繰り返してきたんかなあ?  こりゃ、本当に僕は盲導犬(アイメイト)にならなきゃならんではないか?!この家族の為に・・・!?  やっぱり、ハーネスを付けるのは違和感ありありだ。  遂に僕は、己の全身全霊を人間の虜にされる時が来たのだ・・・と。  毎日毎日毎日毎日毎日毎日、訓練訓練訓練訓練訓練訓練訓練訓練!!  嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!  僕は自由に駆け回りたいし、野原を笑い転げて寝そべっていたい。  なのに・・・それも出来ずに毎日毎日毎日毎日、パートナーと街を歩く訓練とか、街中の障害物を避ける訓練とか、店や電車やバスに乗る訓練とか、向かってくる歩行者や自転車や車からパートナーの身を護る訓練とか・・・  やっと自由になれるのは、訓練後の寝床に就く時だけ。  救いは、訓練疲れを癒すドッグフードのみ。  あー、こっから逃げ出したいよー。  でも駄目だ・・・僕は何の因果か、盲導犬(アイメイト)になるべくしてならなきゃならないらしい。  今日も訓練、  明日も訓練、  明後日も訓練、  その次の日も、その次の日も、その次の日も、その次の日も・・・    
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