不思議の国

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不思議の国

 遥か彼方の空の上。  そこには不思議な国があるという。  これはそんな国のお話。  今日もナータはヨウと遊んでいた。  そこに帰ってきたのはマルリ。 「みんな。ただいま。また、帰ってきちゃった」  マルリは、ちょっと悲しそうな笑顔でそう言った。 「えっ?! マルリ! またダメだったの?」  驚いたナータはマルリに駆け寄った。  マルリはナータの親友だ。 「うん…… 今回はだいぶ頑張ったんだけど…… やっぱり、相性が悪かったみたい」  マルリは、涙を浮かべて俯いてしまう。 「そっか」  マルリが帰って来たのは2回目だ。  元気に旅立って行ったのに、上手くいかなったなんて、悲しくない筈はない。  ナータはマルリの手を取って、優しく握る。 「きっと、また、チャンスがあるよ」  ナータはまだ外の世界へ行った事が無い。  一体、どんなところなんだろう。  本音はマルリに外の話を聞きたいが、我慢した。 「ナータ。キミの順番は?」  仲間はみんな旅立って行くのに、ナータはいくら待っても順番が来ない。  マルリもその事を心配していたのだ。 「まだ。この前もゼスに聞いてみたんだけど、いつになるかまだ分からないんだって」  ゼスはみんなの旅立ちの日を決める役目を担っている。  みんなゼスが大好き。  だからここにずっと居たいけど、いつかは旅立って行くのがここの決まり。  ゼスはいつも、外の世界の事を話してくれるんだ。  「お母さん」って人の話。  それは凄く優しくて、あったかくて、とっても素敵な場所なんだって。  みんなそこに行くために、ここで順番を待っているんだ。  だから、ゼスとも、仲間とも、いつかは離れ離れにならなきゃいけない。  でも、行く先はとても素敵な場所なんだから、ちょっと不安もあるけれど、ボクも早く行ってみたいな。
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