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「ただいまー」
誰も居ない家に帰るのは、もうそろそろ飽きてきたかもしれない。12月も終わりのこの異常な寒さは特に、そんなことを思わせるから厄介だ。
真っ暗な部屋に自分で明かりを灯して、シンッとしたこの空間を誤魔化す為にテレビを付けた。
《さぁ、続いての話題はこちら。今をトキめく超人気俳優の高宮雄飛さん、新たな熱愛報道です。先日の週刊誌の一面を―――》
「……っ」
雄飛の名前が飛び交った途端、ピッと慌ててチャンネルを変える。
学生だった頃は『有名人と幼馴染とか羨ましいんだけど!』だなんてよく言われていたけれど、そんなもの今となっては重荷以外の何者でもない。
見たくないって思うのに、嫌でも目に付く位置になんて居ないでほしい。
今日も1日疲れた、と大きな溜め息と共にソファに沈んだと同時、ピーンポーンと軽快な音を出して鳴り響いたインターフォン。
「……はーい」
こんな時間に誰だろうと、玄関の扉を開けた――……ことが間違いだった。
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