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それから家の扉がコンコンッとノック音を鳴らしたのは、数分後のこと。
「へ!?もう着いたの?な、何よ!」
「……みっちゃん、開けて」
反射的に扉のすぐ傍まで行くものの、どうしても鍵は外せない。
今、雄飛の顔を見られない。
「……雄飛、帰って」
「みっちゃん、俺このままだとバレる」
「だから!バレる前に早く帰りなさいってば!」
「ヤだ」
「……っ」
「もうバレてもいいや。みっちゃんに会いたい」
「……なんで、よ」
どうしてバレてもいいなんてそんな簡単に言えるの。どうしてようやく離れたと思ったらこうしてまた会いたいだなんて言って私を揺らがせるの。
「……お願い美優、顔見せて」
「……っ!」
昔と何ら変わらない言い方。
その声に誘発されるようにゆっくりと扉を開けた瞬間、中へと押し入って来た雄飛は力いっぱいに私を抱きしめた。
「ちょっと、転ぶ……!」
「みっちゃん!」
勢いあまってそのまま後ろに倒れそうになった私は、不覚にも彼にしがみ付いてしまった。雄飛に支えられたお陰でふわりと床に背を付ける。
―――勘弁、してよ本当。
「退いてよ」
「……逃がさない」
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