03.キミは私の愛を摘む。

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至る箇所に散りばめられていたそれは、日を追うごとに薄く、小さくなっていった。 雄飛が付けた赤い痕は、もう殆どなくなっていた。 「ねぇ、この資料って何部印刷だっけ?」 「来週の社内会議の資料でしょ?15部だよ」 「ありがとう美優ー!」 「ううん。じゃあごめん、私先に帰るね」 悠人さんとの旅行までの1週間は、本当に穏やかそのものだった。 雄飛との1件があったから余計に、遅くもなく早くもなくただ平凡に時が流れていくことが新鮮にさえ感じた。 明日の今頃は、もう―――……だなんて考えて首を横に振る。 取り敢えず今は、荷造りしなくちゃ。 社会人になってからというもの、旅行に行った回数は学生の頃に比べて愕然と減っている。今回も久しぶりのそれに少なからず浮足立ってしまう。 新しいキャリーバックに奮発して新しい下着まで揃えてしまった事を少しだけ反省しながら家のマンションの階段を登った、その先に―――。 「……雄飛?」 「あ、おかえりみっちゃん!」
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