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「ド、ドラマの……練習?」
「そ、」
「そ、そんなの他の人としてよっ」
顔を背けながらがっちりと掴まれている両腕を振り払おうとしても、雄飛は頑なにそれを阻止してただただジッと私を見てくる。
いつもみたいに微笑みかける事も、茶化すように悪戯をする事もなく、ただそれがどんな意図があっての事なのか、仮面を付けたままの雄飛に戸惑う事しかできなかった。
「最終話、シーン№9、場所は……彼女の部屋で」
「え、ちょっ、は?」
「彼女に送る最後の言葉、ね」
「だから、私には出来ないって、ば」
その途端、綺麗なまでに二人がぶつかり合う音を奏でるように私を引き寄せて抱き着いた雄飛は、耳元でそっと言葉を紡いだ。
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