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黒いキャップを深く被って、宇宙人を思わせるような形の大きなサングラスに、白いマスクを装着している輩に―――……拉致された。
口元をしっかりと抑え込まれて、大きな黒塗りのそれの後部座席に押し入れられる。加えて『ヨロピコ』などと馬鹿なことを言っているから相当頭のおかしい人に違いない。
「―――ッ!」
このままだと殺される。
突然の出来事に何が起こったのかはっきりと理解していないまま、隣に座る黒ずくめの男に必死の抵抗を試みた。
「ちょっ、痛い!痛いんだけど!みっちゃん俺!俺だってば!」
「んんーっ!」
「暴れ、んなってこの……っ!俺!俺だよ雄飛だよ!」
「……ん?」
「いい!?手、放すから絶対叫ばないこと!それから車を左右に揺さぶらないこと!分かりました!か!」
コクリ、と頷けばゆっくりと口元から離される彼の手。身動きが取れるようになった途端、私は彼を押し倒して反撃にでる。
「わお、俺に跨るとか今日のみっちゃん大胆」
「アンタ、その歳になってやって良いこととそうじゃないことの区別もつかないわけ?」
「みっちゃんこそ、その歳になってもまだ俺のことをすぐ理解しないのってちょっと頭可笑しいんじゃない?」
「……殺されたいの?」
「まだ死にたくないけどこのままみっちゃんに押し倒されてる余韻を味わってたい」
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