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ちょうど信号待ちで停まったこの車の鍵を外して扉を開けようとした、その手を雄飛は被せるようにしながら阻止する。
車内の空調は適温だとしても、この真冬の時期には似合わない程の温かい手をしていた。
「――みっちゃん、行っちゃヤダ」
「……っ」
その言葉に、グッと喉の奥が詰まる。
伏目がちにそう言う彼から咄嗟に視線を逸らした。
「今日、忙しかったから疲れてんの。帰らせてよ」
「山……、ナントカさんの寿退社祝いでしょ?」
「そう、山崎さん。知ってんなら尚更、もう言わなくても分かるでしょ?」
「俺その人のことは全然興味ないんだけどさ。でも今日は絶対成功させたいんだよね」
「はい?何を?」
「みっちゃんこそ、いちいち言わせないでよ」
……あぁ、そういうこと。
やめてよ雄飛。
「だって今日みっちゃんの誕生日、でしょ?」
「……」
「25歳の誕生日、おめでとう。美優」
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